attention!
事後あるあるネタで、本番はないのでぬるいですが若干注意。R-18








ぴちゃんっ、と僅かに跳ねる水音が響く―――
まどろみに意識を置き去りにしながらも、この場では違和感がある筈のさざめきに、ヌヴィレットは薄っすらと瞼を開いた。

「……ヌヴィレットさん、起きたのか?」
「リオセスリ殿……?」

自分がベッドに横たわっている事、そして同じくベッドに腰かけたリオセスリが目じりを少し下げて心配そうにこちらを覗き込んだ。
はて、とその状況から一瞬にしてヌヴィレットの記憶が鮮明に蘇った。無論の事この男と、同衾共枕をしたという事をだ。これは別に初めての事ではない。そうはいってもまだ片手ほどの経験しかないため、そもそも情交を結ぶこと自体がリオセスリから全部伝授された為、そう簡単に慣れなくあったとはいえだ。

「まさか……私は気をやっていたのか?」

一人安全が確保された場で眠りに落ちるならともかく、自分以外の誰かがいる場面で、意識を飛ばすなど初めての事だったから流石のヌヴィレットも驚いた。
ふと視界をずらせばカーテンの外の暗闇、また身体に残るけだるさなどから鑑みれば、喪失していたのはそう長い時間ではなかったとは思うが、それでも満足して眠りに落ちたことには違いない。

「あー、まあそうなるかな」

そう言いながら、ベッドの傍らに設置されたサイドチェストに乗せた大きなトレーにリオセスリが手を入れると、ぱしゃりと響く確かな水音がした。先ほどヌヴィレットが耳にしたのは、この音だったのだろう。自らの身体は水に関することは殊更機敏に反応する。トレーには、水が張ってあるようではあるが、多少の湯気が見え隠れしているので温かいと思われる。
リオセスリは、ぬるま湯の中に浴室リネンをさらして、そのタオルを絞っていた。

「さて、ヌヴィレットさん。正直、あんたが眠っていた方が都合は良かったんだが。起きちまったものは、仕方ない。無理だと思ったら、目を閉じてもいいから。しばらくじっとしてもらえると助かる」
「一体、何をするつもりだ?」

直接的な返事はせずにリオセスリは、ヌヴィレットに薄くかけられていたシーツを剥ぎ取り、自身は本格的にベッドの上に乗り上げた。事後なのでヌヴィレットはシャツ一枚羽織っているにすぎず、リオセスリも寝起き程度の軽装だ。シーツを失ったことによる風通りの良さで少しの身震いをしたが、直ぐ近くにリオセスリが居るからこそのほのかに伝わる温かみはあった。
だがこれは、意識を失う前の性交の再現と言っても過言ではないほどの構図であった。しかしそうなると、寝ていた方が良いという発言とは矛盾をきたす。もちろん今まで双方の同意の上でしか房事は行われていない。だからまるでヌヴィレットが歓迎していないかの物言いに、少しの胸の騒めきを感じたのだ。

「……いつも身体を拭くくらいなら、自分でやっているが」

どうにも色を含んだ言い方をされたので一瞬勘違いをしてしまったが、しばらくするとリオセスリは温めたタオルを片手にヌヴィレットの汗をぬぐい始めたのだ。
それをされて別に嫌なわけではないが、そんなことも出来ないほどの子どもではない。甲斐甲斐しく面倒を見てもらう事に多少の心地良さは感じたものの、なぜ今回に限ってそんなことをと疑問に思うばかりであった。

「あー、すまない。今回は、身体を拭くだけじゃダメなんだ」
「どういうことだ?」
「ヌヴィレットさん、あんた意識を失う前の事を覚えてるか?」

そう言いながら、リオセスリは明らかに明確な意図を持って、ヌヴィレットの太ももに手を触れた。もちろん最初こそは添えるだけで、タオルを動かしていたのだがやがて膝を立てられて尻をむき出しにされる。数時間前の一連のやり取りを彷彿とさせる流れを促されて、沸々と蘇った記憶があった。
そもそもの前提として、今回の逢瀬はかなり久しぶりであった。互いに多忙極める役職についており、住まいの立地的にもそう簡単に密会出来はしない。そんなこんなが数か月にも渡り続き、ようやく?み合った時間。その代償としての交わりは、圧倒的な熱に犯されて今までで一番の多幸感を生み出した。

「……思い出した。私は、たくさん君をねだった」
「俺も甘えるあんたに理性が飛んじまったことは、否定は出来ないが……やらかしたことは申し訳なく思ってる」
「やらかした、とは?」
「あんたの腹の中に、全部注いじまった」

すっと、その大きな手をヌヴィレットの臍の下腹へ当てたリオセスリは、すりすりと指先でその場所を撫でた。思わずヌヴィレットも目をやってしまうが、本当はそうでなくとも満たされた腹の中は僅かに膨らんで至るような錯覚を得るほどであった。
そもそものリオセスリは冗談めいた口調をすることが多いが実際はとても紳士的であり、特に閨ではヌヴィレットの負担にならないようと細心の注意を持って優しく触れてきてくれる男だった。そんなに繊細にしなくても簡単には壊れないと伝えたが、それでも俺がそうやりたいからしているだけだと言い、毎回とろけるほどの甘い時間を与えてくれる。前提として他の人間と身体を重ねたことがないのでヌヴィレット基準では違いがわからないものの、これがかなり丁寧だとわかるくらいには手厚く扱ってくれた。その流れとして、当然の如く毎回エチケットとしてリオセスリはスキンを付けていた。だから今回が初めて、ヌヴィレットがこの身で本当の彼を受け入れた事になる。
無意識に、自分の手も下腹部に伸びてふと触れてみて、少しの首をかしげる。

「この中に、リオセスリ殿の子種が?」
「すまなかった。どこか具合は悪くないか?」
「特に問題はない…が、なぜ謝罪の言葉が出てくるのかわからない。きちんと付けようとしたリオセスリ殿を制止して、早くと渇望したのは私の方だ」

触れ合う事の出来なかった期間が長すぎたせいか、余裕なく求めたのはヌヴィレットだった。
雪崩れ込むようにベッドに誘導したし、行為中は不用意に離れたくなかったからずっとぎゅっと抱きついていたし、足も執拗に絡めた。挙句、挿入時にはスキンを取りに投げ散らかした服を拾おうとしたリオセスリを拘束した結果、最後の射精まで抜くことも許さなかった。当然の結末だろう。ヌヴィレットの記憶では何度目かの射精までしか明確には残っていないが、きっともっとたくさんしているだろうし。ゴムの摩擦感のない魅惑的な行為にそれまで努めて理性的に触れてきていたのに今回のリオセスリは、明らかに焚きつけられていた。すべてヌヴィレットの身体を一番にと思っての行為で、ヌヴィレット自身が望んだ結果なのだから謝罪は必要ない。

「俺は、あんたに嫌われるのを恐れているのさ。正直はじめての時でさえあんなにがっつかなかったんだが……歯止めがきかなくて、手荒くしたことに違いはない」
「特段、痛みなどはなかった。むしろ、普段より……」
「どこか、ダメなところがあったか?」

そこで流石に言葉を続けるべきか、一旦迷いヌヴィレットは少々歯切れ悪く口ごもった。
でも正直に伝えないと、いつも営み中に気を使ってくれているリオセスリに申し訳ないと思っているので、意を決して口にすることにした。

「……挿れられた瞬間、リオセスリ殿の温かさが直接伝わってきてや粘膜同士が触れ合う感触が堪らなくて、終わりがない気持ち良さがあった。普段とは比べものにならない程で、恐らく意識を失った原因だろう。きっとこれが、本当の性交だと学んだ」
「っと、あんたって人は………………いや、俺も認めよう。最高だったよ、あんたの身体は」

言葉と共にリオセスリががばりと抱きしめてきてくれたので、当然のことながら呼応する。
でもそれでは足りず、もっとを求めて手を伸ばす……のは叶った。だが、より密着を果たすためにヌヴィレットは身を乗り出すように動作をかけたのに、それは上手くいかず、がくっと頭の角度が後ろに舞い戻った。

「どうした?」
「腰を中心とした下腹部全体が普段通りの動作を許してくれない。それに、やはり腹に違和感がある」
「あーそうだった。早く処理をしないと」

慌ててずり下がったリオセスリは、再びヌヴィレットの太ももの裏筋に手を当ててぐいっと持ち上げた。
急いでいるのだろうか、少し性急にも思えるその手つきに、腰と尻を持ち上げられる。そのままの流れでサイドチェストからタオルをつかみ取り、手早くシーツの上に敷くと終いにはヌヴィレットの腰の下にもタオルを敷こうとしたので、流石にただ事ではないと理解する。

「何をしようとしている?」
「ヌヴィレットさん、今マトモに動けないだろ?俺が、あんたの腹に入れたもんの後処理をする」
「後処理とは、具体的に?」
「掻き出すつもりだ。もちろん身体は傷つけないようにするが」
「必要な事なのか、それは?」
「このままじゃ、気持ち悪いだろ?」
「わからない……が。言われてみれば、何かが奥にプールされ持続的に遊走しているような感覚はある」

普段あまり意識をするような個所ではないのだが、気持ち悪いという感覚とは無縁だったのでヌヴィレットは素直に感想を述べた。
リオセスリが果てた瞬間は、あまりに無我夢中だったのでそれほど鮮明に覚えているわけではないが、きっと勢い余った精液は奥へ奥へと進入したのだろう。

「そんな、ことまでわかるのか。あんたの特異体質の便利さがこんなところで発揮するとは、な……」
「だから……多分、不快ではない」
「そんなことがわかるってことは、あんたの身体は相当過敏って事だ。きちんと掻き出さないと腹痛をもよおしたりする。万が一、体調が悪くなって風邪でもひかれたら、困る」

いつもだったら、性交渉後はヌヴィレットは浴室で一人で湯浴みをするくらいであった。確かに力が入らない事は事実ではあったが、そのような手助けを受けるとは想像だにしなかった。だが、この件に関してリオセスリは一歩も引かなかった。だからヌヴィレットが起きる前に後処理したかったのかもしれない。
そのままだと良くないということは、ヌヴィレットにもなんとなくわかったので、受け入れる事とした。



◇ ◇ ◇



「待ってくれ、せめて明かりを消してくれないか?」

夜はまだ終わらない。
部屋の大部分の明かりは落としているものの、ベッドサイドのランプは間接照明として立派に機能している。なんだかよく考えたら、通常の媾合より余程恥ずかしい事をこれからするのでは?と今更ヌヴィレットは気が付いたのだった。

「そうしてやりたいのは山々だが、生憎俺も初めてやるから。見えないのは困る」

諭すように一度ヌヴィレット肩に触れてから心配をするなと頭を撫で、そしてお気に入りの髪を軽く梳いた。リオセスリの事は信頼しているし、怖いとか恐怖的な兼ね合いで言ったわけではなかったのだが、その真意がどこまで伝わったのかはわからない。
しかしながら、こちらの挙動が落ち着いたと判断したのか、すぐさま再びヌヴィレットの上半身は枕とベッドに背を預けさせながらも両膝を立てさせた。タオルを敷いて角度を調整されたせいで、図らずしもリオセスリに向けて尻を突き出すような形となることが居たたまれない。普段ならば、一夜の熱に浮かされてそんな事は気にならないのだが、今のヌヴィレットの意識はあまりにも冴えているので、これから繰り広げられると思うであろう事項を露骨に意識してしまう。
両尻たぶを掴まれ固定され、少し力を入れて左右に割り開かれた。顔を少し近づけているリオセスリにはきっとすべてが曝け出されているであろう。今まで事後処理をやってもらったことなどないし、普段性的行為をする際はここまで明るい下の元ではない。それが、今無防備な状態で見られている。その行為に思わずヌヴィレットはかっと赤くなった。だが、リオセスリ自身は極めて真剣に向き直っているのである。制止することなどとても出来ない。
妙に寝返りも打てずにいると、リオセスリが手に持った濡れタオルがゆっくりと後孔に当てられた。一度温められた濡れタオルは、体温よりもずっと低かったがそれでも心地良いと思える体感ではあった。無暗に擦るわけではないが、拭くというよりは軽く押し当てるように刺激されると、微妙な変化に気が付く。

「少し、出てきたな。そのまま動かないでくれ」
「ん……」

とろ……と薄い水分のようなもの。液状と化した精子の一部が、後孔から溢れ出た。
いつもは、薄いスキンの中で閉じこまれたり拭かれて無くなってしまうリオセスリの精子が、本当にこの身に宿っているのだとヌヴィレットは体感と視界から見知った。これほどまでとは思わず垂れてしまいそうになるものを、リオセスリが拭ってくれるが、じんわりとしばらくその作業が続き、やがて止まってしまった。そうなってしまうと、いくらタオルでトントンと叩いても何も起こらない。

「終わった、のか?」
「いや、まだ全然だ。俺が注いだ量は、こんなもんじゃない。悪いが、中を確認させてもらう」

態勢を変えてヌヴィレットの右足を軽く持ち上げたリオセスリは、いくら暖かくとも無機質なタオルでは限界があると判断したようだった。下に敷いているタオルを確認してから、先ほどまでこちらに刺激を与えていたタオルは脇に置いてしまった。
ぐいっと、今度は左手で軽く指の痕が付くくらい尻たぶを掴む。次いで添えられた右手の指先が少しずつ、後孔に迫ってくることは流石のヌヴィレットでもわかった。その敏感な縁へは直ぐに触れずに、周りを軽くマッサージでもするかのように縁沿いにぐるりと軽く揉む。狙い撃ちをされていることを逆に意識してしまい、もどかしむ。そうして思わず内股になってしまい、意図せずリオセスリの手を止めさせることになった。

「すまない、つい……」
「ヌヴィレットさん。あんた、自分の足持てるか?」
「……私が、か?」
「ああ、根気が入りそうだからな。そうしてもらえると助かる」
「それは……いささか気恥ずかしい、が……」

一旦リオセスリはすべての手を離して、会話の為に身を起こしてしまった。
正直言って、非常に恥ずかしい。自ら進んで曝け出すような場所ではないのは確かで、そこを見たり触れたりするのを許しているのも、相手がリオセスリで推し進めてくれているからという名目があるからだ。それを、まるで進んで積極的にとなると、自分の倫理観の線を一つ踏み外してしまうかもしれない。しかしながら、これは決してやましい事ではなく必要なそれこそ医療行為の一種でもあるのだ。そんなことはいわれないだろうが、じゃあ自分でやってくれなどとなったら、それこそ勝手がわからず困るのはヌヴィレット自身である。
おすおずとした動作になっている自覚はあるが自分の許容いっぱいなことは確かで、自らの意思で両膝を何とか立て直した。ずりずりと踝に少し力を入れて、段階的に足を開くこととなる。もちろんこれで終いではないことも理解している。羞恥の極みではあったが、自らの両手を尻たぶへ掴んで持っていき拡大するように開いて見せた。あまりにもはしたない光景となっていることは容易に想像ができるので、さすがのヌヴィレットも真正面を見る事は出来なかった。まるで待ち受けている状態のようだ。

「……上手く、できているだろう……か?」
「ありがとう、感謝するよ。ただ、少し指を食い込ませすぎだ。ヌヴィレットさんの白い指が余計に白くなっちまう。ほどほどで平気だ」

ふっと、ヌヴィレットの指に触れてきて優しく撫でてくれる。おかげでようやく緊張感も少し解れたのだった。
白日の下に晒されたことで目視できるようになったその場所に改めて向き直ったリオセスリの指が、とうとう後孔の縁に直接触れる。入口をほぐした方がいいらしく、純粋に拡張に力を入れるようだ。ここを慣らす行為自体は毎回行っているが、今回は身体を重ねたのが数時間前ということであっさりと侵入を許した。つぷりと入ってくる感覚がわかり、一本の指が中を探るように状況を確かめている。触診とも思うほどのあっさりとした動きを示したのち、直ぐにリオセスリは指を抜いてしまった。だが、それに追随して指にまとわりついた精液は確かな存在感としてあり、その指はてかてかと濡れていた。

「ぁ……」
「いつもとは勝手が違うから、辛かったら言ってくれ」

一度の確認を終えると、断りを一つ入れてから再びリオセスリは右指をヌヴィレットの中に入れた。次いで左指も縁に添えて、ぐいっと後孔を結びから解放するように開いた。そこには、はくはくと開放された後孔の中があった。しばらくすると、とろりと先ほどタオルで拭っていた時より確実な精液が零れ落ちて尻の下に流れていくことがわかった。それだけでも割と驚愕な事なのに、リオセスリは中へ入れた右指を明確な意図を持ってくいくいと動かす。それが放出された精子を吸い出すための掻き出し行為だとは理解しつつも、頭の中の整理が簡単にはつかない事項だった。それなのに、何度も何度も続くのだ。一体いつになったらと……時間の経過にしか身を委ねられないほどであった。
もちろんこれは医療行為のようなもので、それ以上の他意はない筈。でもあまりに行為が直接的すぎて、それで性的興奮を抑えろというのは無理がある。リオセスリは、ヌヴィレットの負担にならないようにと可及的速やかに終わらせようとしている。邪魔になるから反応をしてはいけないとわかっているのに……自らが広げているからこそ閉じる事の出来ない両足の狭間から、ヌヴィレットは自身の性器が隠しきれないほどに反応している事をまざまざと見せつけられる。
自分を律することは得意だったはずなのに、好いてしまった者から与えられるあまりにも多大な刺激が執拗とさえ錯覚してしまう。いつもの慣らすときより殊更丁寧に扱われるのはわかったが、そういう意図ではないからこそ予想が出来ない指の動きにどこまでも困惑した。

「……ふ、っ。…………んッ」
「苦しいトコ、すまない。出すために、こっちからも押させてくれ」

左指は相変わらず後孔の縁に添えたまま、ゆるりとリオセスリはヌヴィレットの腹に右手を置いた。大きなリオセスリの利き手が開かれて当てられると、丸ごと飲み込まれそうな感覚さえある。その温かい手のひらが安心出来るだけの存在な筈なのに、ぐっと五本の指先全てに力を込められる。
ぐっ、ぐっ、ぐっ、と一定の間隔で下腹部を押し込むようにリズムしたのだ。それは、ヌヴィレットの奥に向かってすでに泳いでしまった精液をも外に出す筈だったのに。

「つ……、……あ……、だめ。だ…………それは」
「少しだけ我慢してくれ」

ヌヴィレットは小さく拒否の言葉を出したが、閨の拒絶など余程の事がなければ通らない。その判断をされたらしく、変わらずとんとんと下腹部を押され続けた。合間に優しく腹を撫でられて、余計にはくはくと動くしかない。よりにもよってその感覚は、リオセスリが挿入するときの間隔と同じだから余計に始末に負えない。腰が自然にずるずると逃げて、自らの掴んでいた太ももももうマトモには持てない。
腹の中を探られ、腹の外から押され、双方の刺激を容赦なく浴びて混乱を来たしてくる。この行為の先にあるものが、よりにもよって身に受けたリオセスリの子種をひり出す為だなんて、あまりにも相反しすぎていた。
だから、嫌だ………と思った。辛いとか苦しいとかそういう事じゃなくて。あれほど元は太いものを受け入れていたのにそれが無くなって、代わりに残された子種まで奪われるのは名残惜しいし、もったいない。身体に良くないものだとわかっていても、それをも凌駕する思いがあった。

「…………っあ!……、ッッっ!」

認識した瞬間、びくんっと全身を駆け巡るぞくりと快楽にヌヴィレットは打ち震えた。
中が明確に収縮し、何かが今まで体験したことが無い事が起こったのだとはわかったが、直ぐには何が起きたかは理解できなかった。ただ、どんどん奥に精液を追いやってしまった筈なのに、じわーっと精子が広がる感触がどこかに消えていた。



「ヌヴィレットさん、大丈夫か!?」
「っ、は、リオ……セスリどの……」
「すまない、無理をさせた」
「違う、これは……」

直ぐに中から指を引き抜き押していた腹からも手を引いたリオセスリは、少しぴくぴくと震えるヌヴィレットの身を慌てて起こした。心配そうにこちらの顔を覗き込み、頬をやわらかく撫でる。
確かにリオセスリは多少の無理は通したが、普段の床事情の方が余程ヌヴィレットを揺さぶる行為をしているので、まさかこの程度で何かが起こるとは思っていなかったのだろう。

「無理をさせたのに、悪いが。まだ全部は掻き出せてないんだ……」
「……それは。もう大丈夫だ」
「いや、そうもいかないだろ。少し休んだらせめて水場のある浴室で……」
「本当に大丈夫だ。もう、私の腹の中にリオセスリ殿の子種は残っていない」

苦痛の表情を見せてくるリオセスリに、ヌヴィレットは冷静に現状を説明することとなった。自分でも未だに理解の把握は収拾ついてないが、事実なので口に出したことで余計に明確となった気さえする。
それに元々が指なんかでは届かない程に、奥深くまでねっとりと入り込んでいたのだ。奥の奥に叩きつけられたものを取り出すなんて、どんなに刺激を与えても限界はきっとあった。

「は?どうして、そうなる」
「君の子種は、先ほど私の胎が吸収した」
「え……そんなことして、あんたの身体は大丈夫なのか?」
「問題ないだろう、私の体質なら」
「それならいいけど、もしかしてただの水とかでも吸収するのか?」
「そんな事はない。私が欲した液体だから、取り入れたんだ。君の子種を」

無意識下でヌヴィレットは己の下腹部を撫でていた。
ここに、リオセスリのものが入っている。込められた感情を水分として認識して―――

「そいつは、随分と熱烈な歓迎をしてくれたんだな」
「元々は、君が私にくれたものだから。私の好きにしてもかまわないだろ?」
「そりゃ、そうだ」

少しだけ笑ったリオセスリは、先ほどまで息を切らしていたヌヴィレットを抱きしめる。
そうだ、焦って身体を重ねてまだこんなこともきちんとしていなかった。こうやって、ゆっくりとベッドの上でキスするのも指を絡めるのも何よりも心地良いが……何度共にしても惹かれ続けているこの男には、やはり。





「ところでリオセスリ殿。この方法なら、いつでも君を欲することが出来て好ましい。またお相手をして頂いても?」

一度外れた加減が効かない。足りない、もっと欲しいと。先ほど得てしまった失ったものを埋めるかのように、誘いをだす。
こちらの準備はもうとっくに出来ているのだから。あの征服感をまた………と、打ち震えた。





果たして―――彼は、私を軽蔑するだろうか?






















水 龍 の 欲 し が り