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肉体関係のあるタルディルで、タルタリヤ誕生日話。致しているので年齢指定。










ここ璃月にて、ファデュイが拠点とする箇所はいくつもある。それは、北国銀行だったりスネージナヤ大使館であったり璃月千岩軍が提供した宿泊施設…と様々だ。勅命により璃月に赴任した公子タルタリヤは、この国でのファデュイの統括が主な仕事で、各所点々と指示指令を繰り出す身だ。敬愛する女皇もそうだが、自らが動くのではなく部下を適材適所に配置し監督することこそが、本来の執行官の任だ。管理職の宿命として書類仕事は正直本職ではないが、タルタリヤは執務室での責務にしばし没頭していた。

「公子様、本国よりお手紙が届いております」

璃月港にスネージナヤ籍の船舶が到着すると、荷運び物と共に仕事は一気に増える。その中でも定期的に届く手紙があった。タルタリヤ宛で検疫をされることのない数少ないものの一つだ。一先ず部下を下がらせ、タルタリヤの決済サインが必要なワークフローの選別を終えたところでようやく区切りが着く。開封せずに執務机の引き出しに格納しておいたその手紙を取り出して、封を開いた。

「そうか、今日は…」

思わず独り言をつぶやくくらいであったのは、同封されていたのがバースデーカードであったからであった。送り主は、故郷の家族面々一同となっている。年を重ねて海屑町を出て行った兄姉もいるが、皆一言ずつ直筆のメッセージが綴られている。今年の誕生日もスネージナヤで迎える事は叶わなかったが、別に後悔はない。自分が他国で責務を全うすることで、行く行くは本国の家族にも恩恵があるのだから。ただ、少々忙しさに埋没してしまい、自身の誕生日など忘れていた事は確かであった。タルタリヤの本名や生年月日を見知っている人間は一握りでしかないから、 こういう事でもなければ意識付けが低い。手紙には家族らしくタルタリヤの身を案じ、くれぐれも身体を労わるようにと母親からのメッセージもあった。本当は、明日現場に直接出向いて指導するつもりであった。しかし、たまには部下を信頼して一任する、そんな日があっても良いかもしれない。直行の予定を切り替える指示書を残したタルタリヤは、本来ならば隣の仮眠室で数時間程度の眠りを得るつもりだった。だが、今日くらいは母親の言う事を聞いても良いだろう。久しぶりに、私室に戻る事を決め込んだのであった。
璃月でタルタリヤが私室と証する場所について、公言はしていない。それは寝食をする場という認識よりは、直ぐには使わない物や多少の私物を置く場所だからだ。仕事で必要な物品は大抵、各々の執務室に置いてある。しかし今回のような家族の手紙は、収納している専用の小箱が私室に置いてある。だから、荷物を取りに行くだけではなく、気を張り詰めて眠らなくても良い空間に向かうというのも久しぶりであった。ファデュイではなくタルタリヤ個人…それでも偽名ではあるが分譲購入した一室。
鍵を通し開けて入室すると、奥の部屋に人の気配があった。警戒をしながら、仄かな灯りの付いた寝室に忍び寄った。

「誕生日なのに、随分と遅い戻りだな」
「えっ。どうして、俺の部屋に君が居るの?」

ベッドに腰かけて不遜に脚を組んでいたのは、情人でもあるディルックであった。予想だにしていなかった相手の登場に、張りつめていた警戒心が一気に薄らぐ。背後に忍ばせていた武器を一旦終ってみせた。だが、驚きはしばらく残ったままだ。

「何を言っている。以前、君が無理やりこの部屋の鍵を僕に渡した事があっただろう」
「確かに、いつでも歓迎するって言ったけど…」

まさか本気と捉えられるとは思っていなかった。それは、遡る事数か月前の出来事だ。
タルタリヤより数歳か年上のディルックだが、また先に彼の方が誕生日を迎えてしまった。タルタリヤとて深淵に落ちており、多少テイワットの時の流れに逆らったことがないわけでもないが、それでも年齢という差は一生埋まらないであろう。その時に、ディルックの誕生日を祝いきちんとプレゼントを渡したが、ついでのように押し付けた物の一つが、璃月での私室の鍵であった。この部屋ではファデュイ執行官としての形跡が残るようなものは一切取り残してはおらず、タルタリヤのプライベート的な一面が色濃い。だからディルックに見られて困るようなものはないとはいえ、自己満足の一つでもあったのだ。この部屋の鍵を所持しているのは、タルタリヤとディルックの二人だけ。そんな細やかな秘密の一つくらいは共有したくあった。だが、それ以上の事などは想像もしていなかった。

「僕の誕生日にわざわざ渡すくらいだから、そういう意味なのかと思ったが…違ったか。迷惑なら直ぐに帰るが」
「そんな事、別に言ってないって。ただ、来てくれるなら事前に連絡は欲しかったかな。俺が来なかったらどうするつもりだったの?」
「君の誕生日に僕がこの部屋に来た事が重要で、別に君の会うのが目的だったわけじゃない」
「本当に、たまたま部屋に帰る気分になった自分を褒めたくあるよ。君に会えず帰らせたと後で知ったら、それこそ自分を呪うところだった」

別に強要したつもりは一切なく冗談交じりに手渡した鍵であったが、ちょうど誕生日だったからこそ妙な意識付けをしてしまったらしい。モンドの守護者として多忙なディルックではあるが、この日の為に日程調整をするには十分な時間はあったようだ。そう考えると、この丁度良い按配の日に産んでくれた両親に感謝しても良いだろう。ああ、そうだ。バースデーカードの返事にはそのあたりの含みも入れるかと。

「随分、大げさな発言だな」
「そりゃあ、そうさ。だって君は、どんな理由であれ、俺の誕生日を祝いに来てくれたんだろ?」
「祝う…と言っても、君のようにプレゼントなどは特別に用意していない。何か…形に残るような物は渡せないからな」
「つまりそれは、君自身がプレゼントって事?最高なんだけど」
「言い方があまり適切ではない。君の表現は、どうにも含みがあるな…」

タルタリヤの言葉を明確に否定しなかったことが、返事でもあった。ケーキもプレゼントも花もディナーも何もないが、タルタリヤの胸の内に炎を灯す最大の祝い事だった。
ありがたいことに一度は帰る素振りを見せたディルックではあったが、今はタルタリヤが入室した時と同じくベッドサイドに腰掛けていてくれたままだった。元々それほど広い寝室でもないし、そもそも生活の拠点にしているわけではないから最低限の家具しか置いていない関係で、この部屋に応接的な椅子や机的な調度品は存在していない。そのせいで、ディルックが待つという選択肢を取ってくれた結果、ベッドくらいしか居座る場所がなかったのだろうが、今はそれが好ましくあった。タルタリヤが隣に腰掛けても、立ち上がろうとはしない。それが、全ての答えだった―――







「えーと、これはどういう状況かな」

いつも通り許可を得てからディルックをベッドに埋没させようとしたが、突然タルタリヤの視界が流転した。受け身を取らなくとも安いベッドではないから心配はない筈なのだが、完全に不意打ちであった。そうマジマジと見る事なんてない無機質な天井を仰がされる。そして体術で見事に仰向けにさせられたタルタリヤに、のしかかるように、ディルックが体重をかけてきたのだ。大の大人二人によって繰り広げられる構図は、ちょっとした猟奇的現場にも思える。
下手に抵抗すると不機嫌になる事は容易に想像できたので、とりあえずなすがままタルタリヤは疑問の声を投げかけるに留める。

「俺は、君から祝って貰える筈では?」
「そうしたいところだが、君は直ぐ好き勝手するからな。拘束させて貰う」

くいっと詰めた自身の首元に指をやったディルックは、シャツの襟を通し身に付けていたタイをするりと外した。その一連で手を伸ばし、放り投げられていたタルタリヤの両手首を一纏めにすると、そのままパレス型のベッドボードの中央にある突起部分へ器用にも括りつけたのだった。
このベッドは本国から持ってきたわけではないので、ベッドボードもそれほど高い位置にあるわけではない。多少のゆるみを持って縛られたとはいえ、タルタリヤは枕を背にしたものの両手を頭上に挙げされられたようなものだった。

「随分と過激な接待だね。むしろ熱烈と言ってもいいかな」
「その接待とやらを受けたいなら、大人しくして貰おうか」

珍しくタルタリヤの調子に合わせた声を出してくれたが、ディルックは大真面目らしい。乗り気なのは大いに嬉しいが、まさか磔にされるとは思わなかった。両手首に巻き付けられたのは、上質なシルクのタイだ。多少擦れたとしも、滑らかに通るだけ。しかし、ディルックの馬鹿力で容赦なく硬く縛られている為、そう簡単に引き抜くことは不可能だ。
タルタリヤが本気を出せば、引きちぎる事も出来るかもしれないが、それをしてしまえば二度とこんな機会は巡り会えなくなると断言出来る。

「君がそこまでしてくれるなんて、意外だな」
「ただ、この前の借りを返しに来ただけだ」
「別に見返りを求めたわけじゃなんだけど…」
「それでは、僕の気がすまない」

確かにディルックの誕生日当日は急な訪問の結果、プレゼントを渡すくらいしかバタバタしており時間的余地がなくて、その夜は抱けなかった。しかし直接この部屋の鍵を押し付けたが、別に突っ返されたりはしなかったのだ。物に罪はない…と言って。だからタルタリヤにとっては、自己満足にも近かった。それを律儀に清算しようとするのが、彼らしくはある。そして、強がっているようにも見える。それは、普段言いようにしてやられるからこその抵抗とも違う様子に見えた。
現状を把握している間に、またがってきたディルックはこちらの上半身の衣服に手をかけている。事前に着崩した為、ワインレッド色のインナーウェアのシャツしか身に付けていないとはいえ、寝そべっているタルタリヤの服を全部もぎ取る事は構造的に不可能と察したようだ。正面の衣服だけはだけさせるに留めているが、それでも十分と判断したのだろう。元々、腹部を軽く露出している格好なのでその延長線上という取り扱いをされているのだろうか。

「前から思っていたんだが、君のコレ…」
「ああ、ベルトがどうかした?」

なんとなく触れられたタルタリヤの胸元のベルトを指し示し、ディルックは疑問の声を出した。
確かに装着している人間がそんなに多いとは思えないので、珍しいかもしれない。人前でこの姿になるなんて、実家くらいだから改めて指摘されて少々意外だった。ベルトの表面を軽く指先でなぞり転がされ、興味深そうにいじられる。いぶかしげに、つうっと伝い探る。

「息苦しくはないのか?」
「ベルトをしていると程よい緊張感があって、悪くないんだ」
「それなら、これを僕に取られたら不服か?」
「そんなことはないよ。むしろ、光栄だ」

ふんっと鼻を鳴らして、タルタリヤを喜ばせているわけではないと言いたげなディルックの表情はあった。そうして多少もたついたものの、指を通されて胸元の黒ベルトの剣先を遊革から外された。張り詰めていた緊張感が、ふっと解ける唯一の瞬間だ。締め付けていたパチンと留め具を外し部屋に響いた音は、まるで何かの合図のようにも聞こえた。
タルタリヤの腰の上に乗っているディルックは、必然的にぺたりと両手を腹に付く事となっている。そのままぺたぺたと何を確認しているのかわからないが、何かを見定めるように肌の上を触られる。するりと平らに撫でる程度であったが、時々は自分の腹部にも触れてみて、違いを比較している様子もあった。多少は似ている人種とはいえ、二人の人生はそれなりに違いもあるので、筋肉の付き方も千差万別だ。いくら同性とはいえ直接触れてまで見比べる機会など、たまに潔癖症にも近い動作をするディルックにはなかったのだろう。夜伽の色気やムードなど微塵も感じさせず、不思議そうな顔からぎこちないスキンシップをする温かいディルックの手は愛嬌があった。

「気持ちよくはないか?」

ディルックの行動を眺めながら微笑ましく感じ取っていたところ、こてりと首を傾げながら尋ねられた。
正直、その仕草が一番きたとは言えず悦に入る様子を隠し、とりあえずうんうんと頷くに留める。ディルックの触り方についてはこちらがするときの真似をしたものだろうが、タルタリヤのように練り込まれた他意が含まれていないから、正直感じ取るものが違ったのだ。ディルックと接するようになって忍耐力を試される機会が増えたような気がする。だが、薄らぼんやりとした夢心地もそう長くは持たない。

「悪くはないけど…そこで動かれると、ちょっと辛いかな」

鍛えているし、別にディルック一人が腰の上に乗ろうがベッドには程よい加減で沈み込む程度だ。しかし、ディルックは両手でタルタリヤの上半身を撫でる事に気を取られているものの、こちらの胸元まで手を伸ばしたり時には両腕を頭上に留められているからこそ反っているので目立っているのか首筋や喉仏にそっと触れてみたりと、少々仕草が大振りになる事があった。そのせいで、尻餅を付いている部分も連動して勝手に動かれる事となる。
安定感を取るなら、腹部に乗られる方が良かったがそれだと呼吸が苦しいだろうと配慮して、ディルックは腰の上を選んだのだろう。骨盤に負荷がかかっているわけではないが、まだ表面上は乱されていない下半身の上で乗っかられてもぞもぞと動かれれば、違う場所を意識しない方が無理であった。

「君は…そういう男だったな」

感嘆のため息と共に呟いたディルックは、手を離してそのまま後退しタルタリヤの脚の間に身を落とした。確かにタルタリヤの見込んでいた、じんじんと響く圧迫感はそれにて消え去った。しかし、未だに頭上に留められた手首を介抱する素振りはみられない。まさかこのまま放置られるのかと、危惧し始めた頃合いだった。

「えっ、嘘。ほんとに?」
「今日は僕が全部やる」

逡巡の様子を示しながらも、ディルックはタルタリヤの腰のベルトを外しにかかった。着馴れた服の構造などとっくに知れ渡っている仲とはいえ、そこまで積極的になって貰った事など今まで一度もない。まさかと、そちらの驚きの方が勝る。
最初にやや無理やりであったが興味本位もあり手を出したのもタルタリヤからだったし、その後もなし崩しに何度も抱いてようやく今の関係を保っている。二人の関係は、あくまでもタルタリヤがしたいからという体裁の元に成り立っている前提が存在している。それを飛び越えて一線を踏み出されたのだ。
やや勢いよく下着ごと衣服をずり下ろされると、先ほど間接的に衝き動かされたタルタリヤの性器が外気に暴かれる。平素なら大人しく制御出来るそれも、さすがにこの状況では緩く起き上がりつつあった。何度も目のあたりにしている筈なのに、ディルックは一瞬だけ性器から露骨に顔を逸らし横目でちらりと見た。

「今更恥ずかしがってて、本当に大丈夫?」
「っ平気だ。これくらい」

指摘されて機嫌を損ねたのか、むんずっとタルタリヤの性器にすぐさま触れてきた。意気込む様子を見せてくれる。虚勢を張り、わざと何でもないように粗雑に扱うのだ。
炎元素の使い手なせいか、ディルックはタルタリヤより体温が高いような気がしていたが、掴まれた手は人肌で温かく感じ取る事が出来る。臨戦態勢に入りつつあった性器を、ぎこちない指使いで軽く握り引き寄せられた。中指の指の腹を這わせるようあてがい、陰茎の表面をへこませない程度の強さ加減が、淡い焦らしともなる。上下にスライドするように摩擦をしようするが、気概があるものの他人に施す戸惑いもあってかどうも仕方ないが手慣れていない様子だ。
それでも好いている相手の必死の行為ともなれば、次第に先端からはとろっとした体液がじんわり染み出る。

「俺は嬉しいけど…無理はしないでね」
「別に、無理なんてしていない。君がいつもしてくる事くらい、僕だって出来る」
「そう。余裕なんだ…じゃあ、口でしてくれる?……………なんて、冗談…」
「わかった。君は少し黙っていてくれ…」
「え?」

なるべく軽い口調で言ったつもりだったのに、ディルックはこちらの言葉を遮ってタルタリヤの脚の間へ身体をうずめた。先ほどまでの片手は添えたまま案外物おじせずに、目の前のちょうど目の前にあった裏筋を赤い舌でぺろりと舐めてくれた。そのまま舌を這わせて吸い上げる丁寧な口遣いがちろちろと覗く。偶発的に刺激を受ける不安定さはなかなか味わえない感覚だ。
さすがのタルタリヤとて、一旦息を飲む。あまりの絶景に眩暈がする程だった。どうも今日は聞き分けがいいようだ。プライドの塊みたいな男を組み敷いているからこそ、普段はなるべく繊細に扱うようにしていたし、口淫を無理に強要した事は一度たりともなかった。ディルックの口元で、確実に自身の性器が育つが…ここは正直になっても良いところだろう、仕方ない。他ならぬ、彼によって扱われているのだから。
そうしてディルックは邪魔にならないようにと一旦髪の毛をかきあげた後、かぷりと先端を口に咥えてくれる。痛みなど全く伴わない甘噛み程度に歯を当てられ、だらりとした状態で細かな動きで小刻み舐め始めた。やがて先端部分だけを口に含んで舌を動かし、舐めながら添えた手をそろそろとした程度ではあるが、必死に動かしてくれる。見よう見まねの必死さは見てとれる。そうして自信がないからこそ、ディルックはちゃんと上手く出来ているか時々上目遣いで不安げにちらちら見てくれる。

「…大丈夫。丁寧に出来てるよ」
「…、ん……っ」

事前に喋るなと言われたものの、褒めてあげれば納得したのか。ディルックは、また向き直ってくれる。無意識かもしれないが、喉の奥からふうっと息を吹きかけられる。淡いくすぐったさの後、深く喉奥まで咥えこまれた。全ては収まり切れないとはいえ、ゆっくり動かしながらも喉の中の締め付けで感じさせる。ただ本来では適切ではないこの行為に、けほけほと涙目で慣れない動作に辛そうな表情を見せる。
本当は頑張る様子に頭を撫でてあげたい、やはり手首の拘束は鬱陶しく邪魔だと、タルタリヤは初めて後悔した。苦笑しながらも、性器に口づけするディルックにとんとんと膝で合図を送り、静止を促す。

「…そろそろ取ってくれても良くない、手首のコレ」
「…………駄目だ。まだ、…君を満足させていない」

ぷはっと少々苦々しそうにようやくタルタリヤの性器を離したディルックは、つうっ…と唾液が溢れてくる様子を拭いながらも言った。
そこだけは譲れない箇所らしい。どうやら本当にタルタリヤを身動きさせないまま、進めるつもりのようだ。これを一般的に奉仕と呼ぶ行為だという事をディルックは理解しているのだろうか。指摘し、自覚させていたら止まってしまいそうだからあえて口にしない、が。

「君を完全には促せなかったみたいだが、まあいい」
「えーと、今度は何をするつもりかな」
「準備するから、少し待て」

タルタリヤとしては、早く拘束を解いてもらって抱きしめたいんだけどなというのが一番の要望だったが、一向に頭上に縛り付けられたタイには見向きもされない。
目下、勃ち上がった自身の向こうで手を離したディルックは自らの着衣を脱ぎ始めた。一つ…また一つとぱさりとベッドに衣服が落ちていく。乱雑に脱ぎ捨てないで、ある程度衣服を整えて除けていくのは流石と言ったところか。時にはモンドの戦士として暗躍するディルックの裸体が少しずつ明らかになる。

「…こっちを見るな」
「生憎、目を覆いたくても、手が不自由でね」

おどけてそう言った瞬間ディルックは、ばしっとタルタリヤの顔に何かを投げつけてきた。視界に被さられたのは、恐らくディルックが普段所持しているハンカチか何かであろう。生地の良さから、結局顔面に与えられたのは衝撃のみであった。

「…っ、く。………はっ、」

ある程度の衣擦れの音が止んだと思ったら、今度は少しずつ切羽詰まったディルックの漏れ出る音が響いて来た。深夜の静かな室内だ。どうしても、せき止めても堪え切れない様子が察せられる。
薄布の向こうでディルックが何かをしている気配はあるのだが、ベッドの多少の浮き沈み以外はわからない。ただ、相変わらずタルタリヤの脚の間に挟んで居る事に違いはないし、こちらの身体にも触れられていない。それなのに、ディルックの甘さを含んだ声が切に交じり込む。

「一体、何して…」
「ふっ、ぁ…見る、な」

タルタリヤが顔をしかめると、軽くしか顔面を覆っていなかったハンカチが少しずつずり落ちて行った。そうして、呆気なくシーツの上へハンカチが落下する頃には、その全容が明らかになったのだった。思わず息を飲む光景がそこには広がっていた。
膝を立てて少し足を広げたディルックは、自身の後孔にそろそろと指を添えていたのだ。ぐにぐにと少しずつほぐすように指を差し入れている。むずむずするような感覚を堪えて、震える内股に力を入れている様子は感度の高まりを物語っていた。

「あ、それ…?」
「…君の、部屋に隠してあった、から…使わ、せて貰った」
「君が準備してくれるなら、全部見たかったんだけどな」
「…君はいつも突然だから、…念のため、んっ…予め、準備していた、だけだ…」

ディルックが利き手とは逆の手に持っていたのは、潤滑の為の液体が入った容器だった。以前の印象だと、あまり好んだ印象はもっていなかったと思っていたのでそれを彼が手にしているだけで魅惑的な姿なのだが、中身を空け使っている姿を見せてくれるとは僥倖すぎた。もうタルタリヤに露骨に見られてしまったからこそ諦めがついたのか、再びとろりと潤滑塗り広げたあと、受け入れる場所になじませるようにこすり合わせる狂態を入れてくれる。
よく見れば、入っている指は一本ではない。いくら今まで何度も身体を合わせているとはいえ、この短時間にディルックだけでそこまで容易く押し進めるのは不可能だ。つまり、タルタリヤが部屋に戻って来るより前に、先んじて膳立てしていたということだ。なんてことだ。

「今日は、もっと早く部屋に戻ってくれば良かったよ」
「別に、…そんなに待っていたわけじゃないっ…直ぐ、帰るつもりだった」
「じゃあ、なんで今日はここまでしてくれるの?」
「…いつも、君にやりたい放題されるのが、気に入らないから、だ」

一旦、指を名残惜しく引き抜いたディルックは、今度は目の前のタルタリヤの性器を温かく包み込んだ。そのまま手で握り、腰の上まで身体を移動して膝を立てて跨った。
先端の位置をなんとか合わせて、その上からの自身の後孔へと押し当てる。宛がわれたディルックとの接合部は、既にとろとろで吸い付いてこちらを求めている錯覚を受けるほどだった。性器の卑しい先走りと潤滑の為の液体が混じり、触れる度にぷちゅぷちゅとした不健全な音が響く。そのまま前後にスライドさせて見定めるようにするディルックが、タルタリヤにはまんべんなく全てを拾っているようにも見えた。表面だけとはいえ何度か付いて離れてを繰り返らされれば、きゅうきゅうと求め動かれる。

「本当に君が挿れるつもり?」
「僕は、元騎兵隊長だぞ?…これくらいの暴れ馬、わけない」

どこかズレている発言が飛び交ったが、本人は真面目一徹。粋がって、この機に主導権を握るつもりのようだ。上半身が良く見えて悪くない光景とはいえ、本日手つかずの胸も触りたいのに見せつけられているだけで、生殺しだ。これもディルックの作戦だとしたら、良い役者になれる。
そして、ぷちゃぷちゃと後孔になじませたのを確認したのか、タルタリヤの性器を持ちあげすぎないように気をつかいながら、自分の中へと導いていった。

「っつ……あ、…」

温かな圧迫を受け、微細ながらも負荷を掛け組み込まれていく。控えめではあるが、それでもずずっと犯していくいつもの感覚は確かにあった。
顔側にそりあがっている状態のタルタリヤの性器を反対方向へ引っ張ると、角度がつきすぎてなかなかに進まないようだ。だからむやみに腰を落とせない。そうして、とぎれとぎれの息の様子も隠せなくあった。

「頑張っているところ悪いんだけど。全然、入ってないよ」
「いっ、…言われなくとも、わかっている!」

憎らしげに言葉を返すのは、促すようになってしまったためだろう。一応押し込めようとしたり努力をしているようだが、それでも挿入深度に関しては一向に代わり映えがしない。まだタルタリヤの陰茎の半分さえ呑みこめていないのだ。外野となってしまった身としては、途方もなく見える。
正直、ようやくの念願が叶ったものの、普段よりキついな…というのがタルタリヤの印象だった。恐らく、奥の慣らしが幾ばくか甘い。ディルックが自身でほぐしたから、無意識のうちに深淵を覗くのはためらいがあったのだろう。不完全だ。ほんの少しの挿入後は、ゆっくりと腰を前後にグラインドをかけられた。なんとか状態は動かさず、肋骨から下だけを動かすように努めているが、どうにも進展は見えず瞳を閉じてしまったくらいだった。
あまりに進まない事にさすがのディルックも不安を覚えたのか、恐る恐る浮いていた自身の指先を接合部に持っていき、ぐるっと外周を撫でてタルタリヤの性器の余白を確認する動作を入れた。

「それ、えっろ…」
「………何を、言ってる。僕は、…ただ確認しただけだ」

もはやお互いに焦らされている状態になっている事は、一目瞭然であった。可動部分が少ないと、どうしても単調な動き方になりがちであった。仕方なくタルタリヤは、軽くゆするように自身の腰を左右に動かした。

「っあ!………動くなっ」
「やっぱり動かしにくいな…」

手首を拘束されれば、どうしても動きに制限がかかる。その為のものとはいえ、物足りなさがどうしても。そうして、瞳の端に少しの涙を浮かべつつあったディルックに睨まれつつも、怒られた。やっばり…「絶対に、動くな」と口述の追加もあった。身体はしんどいだろうに、それでも再度の念押しをするくらいだった。自分で押し進める気持ちよさより、恐怖の方が勝るのか。腰を落とせなくて耐え忍ぶ姿に、足に力が入らなくなってガクガクしそうな震える内股を撫でてあげたい。その体勢の方が辛く思えた。
それでも空いばり、ディルックは押し進める動きを再開する。安定を保つために、手をタルタリヤの腰から肋骨当たりに置いた。痛みがあるようにはそれほど思えないから、心理的問題か。なるべく大きく腰を前後にグラインドさせるように動くようにする。本来ならば自由に先端が当たる角度などを調整できるのでもっとも感じる体位でもあるが、チカラの抜き方がまだわからないようだ。それでも身体で動くのではなく、腰だけを振るようにしている。

「凄いな… 膨らんできたの、わかる?」
「なに、ばかなことを…」

稚拙でも、繰り返されれば段々と変化が訪れる。いびつな角度ではあるが、ちょうど先端がディルックの前壁に厚みに当たっているから、その状態で抜け出せないのかもしれないと、ようやくタルタリヤは合点いった。ディルックの弱い前立腺、良いところに先端がつっかかっているから、動かすたびにゴリゴリと接触する。ぐぐっと押す度に密に詰められディルックが感じ入るのがわかり…まるで自慰する姿を見せつけられているようだ。気持ち良すぎるのだろう。
だけど本当に良い場所はもっと奥底に存在することをディルックは覚え込まされているから、宙ぶらりんのまま辛そうだ。もはや、バランスを取るので精一杯の様子を見て取れた。

「っ………これ、以上は…むり、だ……」
「ねえ、手首を解いて。そしたら、奥までしてあげるから」

今すぐにも拘束を壊したかったが、タルタリヤはあくまでディルックの意思を尊重したかったのだ。なんにせよ、繋がれたままでは完全に望み通りの物を与えるのは不可能で、とにかくそれを優先した。

「……………わ、かった」
「ありがとう。…って、え……このまま?」

若干の昏迷の後、熱い息を吐き出しながらもディルックはタルタリヤの頭上に手を伸ばそうとした。前かがみになるディルックの体勢と共に、ぐぐっと前に押し倒されるものがあった。あまりに頭が混乱しているのか、タルタリヤの性器を抜くの忘れている。大きく早く腰を動かし過ぎると、性器が抜けてそこに圧力がかかりへし曲がってしまう可能性さえあった。必死な姿を見せて貰っていなかったら、危うく中折れするところだ。
無理な体勢ではあったが、なんとかそのままタルタリヤの手首に巻き付けた自身のタイをつかみ取る。震える指先だけ力を込めてきつく縛ったことを非常に後悔している表情が下から見て取れる。それでも引き千切ろうという発想にならないのは、育ちの良さを感じた。もどかしさを示しながらも、それなりの時間をかけて何とか解いてくれた。
はらりとタイが、ベッドの下に舞い落ちた。

「おつかれ、よくできたね」
「……っ、これで…、いいか」
「そうだね。お待たせ」

久しぶりに自由になった手で一番につかみ取ったのは、ディルックの両腰だ。
脱力した腰を腕力だけで浮かせて、手を離すとストンと体重が全部落ちる。そのまま引き戻すように、タルタリヤは腰の上にばちゅんっと着地を果たす。腰の重みを使って深い部位にまで到達すると、ずっくりと沈む。

「ぇ…っ い…きなりっ…ぁ、あっ? あ、アぁッ!ぅ、」

ディルックは、ひゅっと喉を鳴らしながら声を上げた。呆気なく果てた結果、まるで無意識のようにディルックの射精が成る。宙を軽く舞い、ぱたぱたと散らばる精液が双方の腹を汚した。そうして脳天まで貫かれたかのごとく、与えられた快楽全てを甘受するのだ。格別の甘さに、何とか意識を飛ばさないように踏みとどまっているが、目の前にはかくんと崩れ落ちそうになるのを耐える脚があった。
挿れてあげたものの、タルタリヤは直ぐには動かない。射精の余韻にしばし浸るディルックに配慮するというよりは、自ら起き上がって良い物かと判断しかねたからだ。それでは、ディルックがギリギリのところで踏みとどまっている優位性があるという体裁が崩れるからだ。このまま流されてくれる人間だったら、そもそも相手にはしていないかもしれない、が。

「さあ、今日は君が頑張るんだろ?」
「…っ…………」
「ほら…自分で動いてみて。君が始めたのだから」

ゆるゆると腰を撫でて促すと、当初の目的を引き戻したディルックがそろそろとタルタリヤの腹筋に手を突いた。ほんの少しだけ上体を反らせる。最初は可愛い動作から入ったかと、納得しながら眺める事となった。そうして、控えめな様子で前後にグラインドさせてこすりはじめた。

「…ん、ッ… ん……っ」

次第にコツを掴んだのか、動作は大胆となる。この体位は、自分の気持ちいいところを探りながら当てに行ける。それこそ先ほどの中途半端より、余程簡易に。タルタリヤに左右されず、己のペースで奥の性感帯に当てられるからこそ、ディルックにとっては都合がよくある。腰振りはウエスト周り、お尻、太ももに負荷がかかるが、鍛えている彼に取っては気にならないのだろう。ちゃぷちゃぷと可愛い水音を立てながら、夢中になりつつもも快楽に飲まれそうになるのを寸でで耐えている。
自分の上で官能的に乱れるディルックの新たな一面は、もっと乱したいという気持ちに火をつける結果となる。

「…ひゃ…っんっ……さわるな」

不意打ちのように、ようやく自由になった手から添えたディルックの腰を掴む力を入れる。しかし、警戒されて無下にもばしっとと手の甲を払われた。動くなと。結局手伝ったのは、奥に挿れる時だけだ。物寂しい。もちろんディルックに動かれる事はタルタリヤにとっても魅惑的ではあったが、より先を求める事は必然でもあった。

「ねぇ、ご褒美が欲しいな」
「、なんの…ことだ?」
「足を開いてみてくれる?」
「そっ…んな、節操のない事。………なんで、僕が、君の言う事を…」
「腰を落とすのを手伝ってあげただろ?今度は君の番だ」

一巡の後、前提を口にしてから、ディルックは自身の両膝を掴んでぐぐっと、自らの意思で脚を開いて見せてくれた。

「……………僕が…したいわけじゃない。………君がしたいと言った、から」

よほど羞恥心を呼び起こすのか、少し顔を背けたままであったが、だからこそ上半身が捻られて余計に際立つ。意地が悪い自覚はあったが、効果は絶大だった。
未だ起き上がる事を許されず寝そべっているタルタリヤの目線では足を開いた状態だと、つながっている部分が見えやすく素直に興奮する。丸見えだ。そうして、ディルックのはくはくと咥え込む後孔の様子が見て取れる。脚を開いている方が、構造的に奥まで当たりやすい筈だ。それで意外に満更でもない様子を見せてくれて、感じ入ってくれる。ただやはり恥ずかしさだけはあるようで、動きながらも勝手に脚は閉じていく。閉じた状態であれば、より中の密着感が増して気持ちがいいと感じる筈だから、内股になっても逆効果だ。そうして、また自然に開いたり閉じたりを繰り返すこととなった。

「あっ、…これ……っん…、」
「いいね。よく動けてる…」

なかなかの媚薬ではあったものの慣れない脚の媚態は多少無理があったのか、今度は上にめがけて腰を突き上げるように動かし始める。少し上体をそらして腰にスナップをきかせるようにクイッと動かされる。スナップを効かせて性器を出し入れすることによってタルタリヤの性器がクイッと引っ張られるのと、二人の結合部分やディルックの胸の揺れもチラつくから、見せつけているのは一緒だ。一生懸命動いている姿が、うぶだ。
あまりの色気に、さすがのタルタリヤもそろそろ理性が焼き切れそうになる。そっと改めてディルックの腰を掴んで、有無を言わさずにずんっと下から突き上げた。

「…まっ、ま…って。いまは…ダメ…ッ…だ…」
「じゃあ、いつになったら許してくれるのかな?」

円を描くようにじっとりと腰を入れて回す。
折角なので、手を伸ばしてぐるりと二人の接合部の縁を指でなぞって確かめると、弱々しくも忌々しく睨みつけられた。さっきディルックがやったことを反芻しただけなのだが、それどころではないらしい。

「嫌なら、今度は俺の手を君自身が掴んで拘束してみる?」

もはやそんな余力はないとわかっていても、わざとらしく尋ねる。それでもディルックの心が簡単に折れることはないから、何とかタルタリヤの両の手を掴もうと躍起になる様子は見せてくれる。その手つきに、普段のような力強さはなかったものの、二人の手が合わされば必然的に恋人つなぎのように指が絡む。じっとりと、指先の痺れが伝わる。
確かに緩くはあったが、再度の拘束は叶った。だから、負けじとディルックも再び動きを再開するように努めるのだ。両手と両手を握り合わせるようにして支えてあげると、幾ばくか動くのが楽になるのだろう。ディルックも腰をタルタリヤの身体からほんの少し浮かせるようにすると、コリコリと先端が当たるのを感じられ、腰を使って反ることで前立腺も突く事ができる。とろとろと含み切れない液が、ナカから重力のまま垂れ落ちた。
太ももの内側をつうっと通る感覚に驚いたのか、脚の裏をベッドにつけた状態でタルタリヤの上にしゃがみこむようなポーズに切り替えられた。ディルックは上下に弾むように動くが、それもそろそろ限界に近いようだった。あまりに長い間の酩酊すぎたせいか、自分自身ではもうどうにもならないのであろう。

「…はっ、…ふ………っ…も、ッッ…」
「おいで」

手を降り広げて胸を開き、タルタリヤは寝そべっているこちらへ倒れ込むようにディルックを導いた。
もはや、言う事を聞くとか聞かないとか、そんな判断も出来なくなってしまった。いざなうタルタリヤに促されるまま、ふらふらとディルックは上半身をべたりと倒した。挿れたままだから、多少無理な角度も腰の位置を調整して、ディルックに負担がかからないように配慮する。とすんっと多少の響きはあったが、ぺたりとお互いの汗を感じるほどの密着だ。

「ようやくこれで、君に口づけが出来る…」
「ん?んんン、、……!」

そうだ、キスは今日初めてなのだ。念願叶ったタルタリヤは、ギュッとディルックのしっとりとした唇に押し付ける。
突然のキスにまだ事態が掴めていないディルック相手に直ぐに唇を割って舌を入れれば、口内を侵害されるトロトロの気持ちよさに流されてくれる。唇を軽く開き、お互いに上下に唇を動かすのも促せばやってくれるくらいだ。口を開いた状態で舌を絡ませれば息継ぎがしやすく、お互いが満足するまでじっくりとキスを堪能できるから、息を合わせて高め合えた。そのままお互いに口を開けて舌を出した状態で、舌と舌を触れ合わせ絡め、突き出した舌を口の外で絡ませる。口内とはまた違った感触が楽しめ、舌が絡んでいる様子が見えてしまうのが視覚的にもとっても刺激的だ。柔らかい舌の感触を味わうためにも、できるだけ力を抜くことが必要だから、今の状態に適していた。
唇を重ねたまま舌を絡め合えば、ディルックとの密着度がさらに増す。密着していることで思うように呼吸ができないが、ディルックの様子を見つつ息を合わせる。わざとじゅるりと音を立てれば、口の端から堪えきれない唾を垂らす。酩酊のうちのキスに、ディルックはなすがままだった。

「ぷはっ……んっ、ツ………、くるし、…」
「ああ、やっぱり動きたいな。君を…思う存分、蹂躙するよ」

自己主張の薄くなったディルックを前に、思い切り腰を一突きしてしまえば、あとはなし崩しだった。キスの合間にディルックが非難の声を出したような気もするが、タルタリヤとてかまけて腰を据える事も出来なくなっていた。ここまで散々煽られて、ようやく思う存分に可愛がれるのだ、仕方ない。もう、なまやさしさは許されない。
両手を握ったまま、ディルックの全身を腰の動きで動かす。脈打つ動きと同じテンポで、タッピングの愛撫を繰り返すのだ。性器の角度と腰の動かし方のバリエーションはディルックとは比較にならない。他人に動かされて、妙な角度で想定外の場所に当たりを知り、ディルックはピクピクと小刻みに脈打つ。ぬぽぬぽと何度も同じ強さ同じリズムで刺激を続ければ、前立腺はぼってりと存在感を増す。そこへの刺激は、あまりにも快楽を感じられる時間が長すぎるのだろう。腹部の苦しさだけではない奥底から沸き立つ感情に翻弄される様子を見せる。ディルックは、もはや隠すことも出来なくなった乱れる姿を晒すのだ。

「ぅ…しつ、こい………っ。 あっ、…ん…ン、ッ……もっ…と、ゆっく…り」
「っ、今日は、散々焦らした君が悪い」

体温が一番感じられる体位だ。腹同士はくっついたまま、ディルックの尻だけ上下させる。ずんずんと押し進めれば股間などの骨と骨がぶつかって、擦れ合うような感覚さえも今は心地よく感じる。
二人の腹部の内側でディルックの性器は押しつぶされ、ごりごり擦れるわかりやすく自身の性器への刺激に気を取られている。だったら…

「飢えた分の精算はさせて貰うよ」
「ふ…ぁ……!、っ、え、な……あッッ な、でっっぇ、あ……ッはげしっ…い…ッ」

呼吸も荒くなってきて筋肉が硬直しはじめるのは、絶頂が近い証拠だ。とろけあい一緒に迎える為に、昇り詰める。ディルックが先ほど自身で苛め抜いた奥底。本当を、改めて思い知らせる。ぐりっと、誘導の為の最後の一押しへ近づく。
片手を離し、ディルックの背中の筋を撫でてから、手を広げて腰の後ろを押し付けて潰した。腹に力を入れてこれ以上性器が押されないようにとしていた努力を、呆気なくひきつぶす。そうして最大までに発達した最奥へと思い切りごちゅごちゅと性器を刻み込み、外からも中からも追い打ちをかけた。

「!…、うっ……… ふか、い…ッて…おくーーー、はいっ、てく…ッイク!!!……あっ!」

最後の矜持を押しつぶすと、ディルックが二人の腹の間で吐精し、ぴちゃりと薄い精液が一面に広がるのがわかった。
最奥はキューっと吸い付き、最後にはきゅっと奥の締め付けをタルタリヤは容赦なく食らう。反動で喜ばせるようにきゅうきゅうと収縮される。より、もっと深くへとこちらの性器が引き込まれそうだった。

「ッ!はっ……!」

瞬間、タルタリヤの性器も抑圧された波を一気に開放する。ドクドクと脈打っていた性器に溜め込んでいた、とぷりと溜め込んだ精をディルックに全てぶちまけるように注いだ。何度か腰を入れて、ぐっぐっと打ち付ける。
征服を示す精の叩きつけは長く、浸透させるようでもあった―――





◇ ◇ ◇





「もう、帰っちゃうの?」
「君の誕生日は終わった、からな」

まだ一眠りしかしていないディルックだったが、ベッドから降り身支度を整えて部屋を出ようとする。
あくまで終始、誕生日だからという言い訳を崩しはしなかった。そもそもタルタリヤが戻って来た時間が遅かったから、仕方ない。もし早く戻ったとしても、長く楽しませてくれることを許してくれる相手ではないとはいえ、素直に残念を口にする。

「忘れ物だよ」

言葉の合図とともにタルタリヤは、ひゅっとそれを投げつけると、ぱしっと反射的についディルックは受け取ってしまったようでもあった。ベッドサイドにぬかりなくわざと置いていかれた、この部屋の鍵を。手の内に舞い戻って来たそれを、しばしディルックは視線をやった。

「これは、もう僕には必要ない―――」
「そうだね、俺も任務があるから長くこの国には滞在しないかもしれない。来年はどこにいるやら」

女皇の命ならば慎んで拝受するが、同僚達の思惑も含む赴任は、予想だにしていない事も多い。元々各国を飛び回る遊撃として望まれている一面もある。
神の心が無くなった璃月は、タルタリヤの欲望を満たせるだろうか?そうして、それは同時にディルックの祖国も同様の筈だが。未来を選ぶのはタルタリヤ自身であるが、それはディルックも同じ事である。最終的には互いが同意しなければ、再度は存在しない。

「次の鍵を準備するから、それとの交換用に一先ず君に持っておいて欲しいな」
「出来ない約束はしない」
「そうだね。でも、もし君がその鍵を捨てなけば…期待しても良いかな?」

結局ディルックは返答をせず、そのままパタンと扉を閉じて出て行ってしまった。あくまで一度預かったものだから、その場で捨てはしないとでも言いたげに。
これは、到底あり得ない事態なのかもしれない…しかし、一握りを残した。それでも「また」持ち帰ってくれた。きっとこれは最優先ではない、けど。
おめでとうの言葉なくとも、今のタルタリヤにとってはそれで充分だった。だから、きっと。

ここではない、どこかで。再び、相まみえるだろう―――













一 年 後 、 冬 国 に て