attention!
嵐迅で、15歳ハジメテ話。迅さん誘い受。前半の謎シリアスを吹っ飛ばすように、アホなノリのギャグで致しています。











嵐山はその時、ローテーションに従った普段通りに防衛任務に当たっていた。
ようやくモールモッドの群れを追い払うことが出来たものの、単騎で少しの深追いをしてしまった為、この為に結成された混成部隊から離れてしまったことに気がついたようだった。嵐山の腹の横から少しずつ漏れ出るトリオン。最初に受けた傷が思ったよりも深く、少しずつ流失をなしていたせいか、チカチカと限界の表示を示しているのが傍目からもわかる。ここまで持ちこたえたのでさえ、結構ギリギリだったらしく、でも何とか間に合って。そうしてようやく、規定の時間をもう直ぐ終えるとの表示が、浮かんだようだった。
だから、こちらに気がついた時は、随分と驚いた様子を見せて。
「迅?」
元は静かな住宅街の塀の上に、迅は少しの足早を見せて飛び乗った様子を見せた。それこそしなやかな猫のように。なじみのサングラスが目にかかっているので、嵐山からその表情は伺いしれなかったかもしれないけど。
「……、嵐山。おつかれ」
「どうしたんだ?今の時間の、担当は隣の地区だった筈だが」
「そうなんだけど…ちょっとおまえに用があってね」
「俺に?」
「もう今日の任務はこれで終わりで、家に帰るだけだろ?本部に戻って、申し送りと報告が済んだら、またここに来て欲しいんだけど」
「それは構わないが…ここに、か?」
嵐山が迅の指し示した場所にいぶかしむのも無理はなかった。この場所は取り立て何もないというか、ただの有り触れた住宅街の一角だったから。
「うん。この家の前で待ってるから…」
迅がそうつぶやいた言葉、きっと嵐山に届いていて。
それがトリガーになったというわけではないだろうが、活動限界を伝えるようにピキピキと嵐山のトリオン体が壊れていくのが目に見えて、瞬く間にベイルアウトの形が空へと成された。





◇ ◇ ◇





「待たせて、すまない」
「そんなことないよ。おれが一方的に約束したようなもんだし」
やや小走りでやってきた嵐山は、すぐさまに謝罪の言葉を入れた。
未来視を持つ迅にとっては、それがいつかだなんてわかっていたことで本当に何とも思っていないというのに。ただの口約束だって、こうやって来てくれて待ちぼうけを食らうことなんてないと知っている。ただ、この待っている時間も少しの楽しみだったことは伝えないけど。
先ほどのB級隊服姿とは打って変わって、嵐山は中学の制服であるブレザーをきちんと着込んでいた。自宅へと帰宅する最中なのだから当然といえば当然なのだが、中学も最終学年になったというのに彼のブレザーはその成長に見合うようにピッタリで且つ、随分と綺麗に着用している。
「迅が待っているってわかっていたのに、少し本部で引き留められてしまってな。遅くなった。それで、俺に何か用事があるんだよな?」
「うん。とりあえず中入ろうか」
立ち話になってしまうのもどうかと思い、くるりときびすを返して、迅は背をおいていたブロック塀から身を放し、今居る道ばたから直ぐそこのありふれた一軒家の庭へと足を踏み入れた。それこそ慣れた足取りで。
「っおい、迅。放棄されているとはいえ、勝手に人様の家に…」
「あー大丈夫、大丈夫。表札見て」
戸惑う嵐山へ視線を促すようにと、塀に取り付けられたポストの上にある文字を軽く差し示す。
そこに記されていた【迅】という名前に、嵐山は瞠目した。そうなのだ。ここは迅の生家だから別に不法侵入というわけではないと、伝えるように。
先頭に立ち促すように玄関までの道を開いた迅は、ポケットから取り出した鍵を通し、よどみなく玄関の扉を開錠した。それでも嵐山にとっては初めて踏み入れる家であることには代わりがないためか未だ戸惑いはあるようで、背を押すように中へと誘うと、お邪魔しますとこれまた律儀な声がかかる。
迅の家はありふれすぎるほどの普通の一軒家なので構造も簡単なもので、中央の玄関から左右に分かれたリビングへとは導かず、そのまま二階へとあがる階段を促した。少しの階段を上ると三つほどある部屋の一番奥の部屋まで案内して、扉を開けた。
「ここがおれの部屋。たまに掃除しに来てるから、警戒区域にある割には保たれてるとは思うけど」
言うほど自慢するものは何もない部屋だった。それこそ普段寝食している玉狛の自室とそう代わりはなく、ベッドと机とあとはクローゼットに簡単に荷物を詰め込んでいる程度。それも、ほとんど昔のままだ。それほど思い出深いものは置いてないし、本当に必要なものは玉狛へ移動させたから余計にシンプルに思えるかもしれない。
それでも定期的な空気の入れ替えが足りないのはわかっているので、一番に窓へと駆け寄った迅は換気を促すために少し網戸にする。思ったほどは、ほこりくさくはなっていないようだ。良かった。
「迅の家が、警戒区域にあるなんて…知らなかった」
「ま。言いふらすような事じゃないでしょ。ボーダー隊員はそっちの方が多いくらいだし」
「そう、だな。迅が、ボーダーにいるのも隊員ならある程度は自由にこの家に来れるから、なのか?」
「んーそういう面もあるかな。嵐山も、一般の人が荷物取りに戻る付き添いしたことあると思うけど、許可申請とか大変そうに見えたし。おれは恵まれてるね」
それこそ先祖代々の墓だってこの区域の寺の一角にあるわけで、母親の墓参りを兼ねてふらふらしてても本部から目をつぶってもらっているのは、迅の仕事の一つに暗躍が含まれているからだった。
本当はこうやって警戒区域内で無駄にほっつき歩くのだって許可がいるわけだが、迅の場合サイドエフェクトの恩恵もあるので今日今この時間に近くでゲートが開くようなことはないと知っていて、だから嵐山を呼んだわけだが。まあ互いにトリガーは肌身離さず持っているから、本部管轄な嵐山の位置は知られているだろうけど。
「どうしてわざわざ俺に、教えてくれたんだ?」
「それは、おれが嵐山にお礼をしたいからだよ」
「特別、迅にお礼を言われるようなこと、した記憶がないんだが」
なんのことかと本当に思い当たる節がないようで、不思議そうな顔を向けた。割と間接的に言っていると思うんだけど、ホント嵐山は自分がした苦労をそうとは捉えていないようで。
「したんだよ。嵐山は…だってさっきベイルアウトした、だろ?」
「それは、したな。迅には不甲斐ないところを見せてしまった」
嵐山はそうは言うが、迅だって彼のそんな姿を見るのは初めてだった。
そう…嵐山は、まだボーダーに正式に入隊して半年も経過していない。ようやく一期生が本格始動をして、混合隊が組まれローテーションとしてきちんと確立したのはほんの数ヶ月前。ゲートの誘導も完璧ではない最中、未だトリガーに不慣れな一期生たちが緊急脱出するのは、もはや日常茶飯事だからそんなに気にするようなことはないのだ。
例えば同期の柿崎などは引くべき場所をきちんとわかっていて、それは野暮な外野からは消極的だと言われたりもするが、結局のところ生き残らなければ次に繋がらない面もある。ベイルアウトがあるからこそ、がむしゃらに突撃して成果がほとんど得られぬままという隊員の方が多い。そうなると後に残った隊員たちが苦労をするわけで、嵐山だって極力戦局を見極めて戦ってきていた。が、今日は時間いっぱいまでいられたとはいえベイルアウトした。それは…
「今日の任務の最初にさ。モールモッドがわりと突然空から落ちて来て、で、嵐山は負傷した。それが長引いて最後にはベイルアウト。そうだよね?」
「まるでその場で見ていたかのよう…なんだな。迅のサイドエフェクトはいつもそんなに正確なのか?」
「いや、今日のはトクベツというか。
嵐山さ…モールモッドの出現には誰よりも早く気がついたのに、避けるのを選んだよね。開いていたメイントリガーのメテオラ、既にセットされてたのに」
「俺の反応が遅かったせいで、避けきれなかった。回避できると思ったのは判断ミスだったな」
「そうじゃないんだ。普通の隊員なら、メテオラで爆撃するの選ぶよ。でも、嵐山はそこが住宅街だからそれをしなかった。誰に教わったわけでもなく」
「それは…」
「だから、ありがとうを言いたくて。嵐山があの時、メテオラを放っていたらこの家、もうなかったんだ。辺り一面、軽く更地になってた筈だから」
少し立ち上がった迅は、それを示すかのように、位置を簡単に空に描くように腕を動かす。
メテオラは多角的な爆撃だ。熟練者とて、そう範囲をしぼってというのはうまくいかない。ましてやガンナーにセットすると、うまい按排の調整が利き難いというデメリットもある。
「そうなのか?そんな偶然…」
「ううん、違う。偶然なんかじゃない。だって、嵐山は他の住宅にもそうしてるし。これもきっと必然なんだ」
ふるふると頭を降って断言をする。
迅にとって、この家は特別に大切という認識は今までなかった。家を壊されることなんて、三門市民にとっては悲しいことに有り触れていて、そんなこと程度でぎゃあぎゃあと騒いでいる状況ではなかったから。でもだからと言って、ネイバーに蹂躙されることを良しと思えるほど薄情なわけでもなかったから。
「でも、迅にはその未来が視えていたんだろ?別に俺じゃなくとも、迅自身の手でどうにか出来た筈じゃないか?」
その方が確実だったと嵐山は言う。
今はまだ二人の実力差は目に見えるほどで、迅の方が彼より何年も前からこの組織にいるからこそ、それが当たり前なことはわかる。確かに迅があの時にネイバーを瞬時に処理をすれば、ここは絶対に保たれる。だが、いつまでも…それが万全には不可能なこと、迅自身がよくわかっているのだ。
「それをやると、キリがないというか。やっぱり自分の家だからって特別視は出来ないなって。だから、この家が今日まで無事であることは奇跡みたいなもので、嵐山がそれに手を貸してくれた事。本当に嬉しく感じたんだ」
きっと嵐山にとってはそんな当たり前の事だった。無意識の産物が招いた今。
もちろん誰だって壊したくて周囲を破壊するわけではない。特にメテオラはセットしている隊員がそれほど多いわけではないから、嵐山の使い方は、すべてを有用に使い切っているというわけではないのかもしれない。それでも、壊すことより残すことの方が容易に難しいと、今までなぎ払ってきたものが多すぎる迅は一番よく知っているから、その想いを大切にしたかった。
「迅だって、今の本部が出来るまえからずっとみんなの為に頑張っていただろ?結果的に、大規模侵攻が収められたのは迅たちのおかげだ。だから、ありがとうって余程感謝する方は俺の方だと思う」
こちらの感謝の気持ちを受け入れつつも、嵐山は迅へも敬意を出した。きっとそれはどこまでも嵐山の本心で、素直な気持ちなのだろう。
「嵐山ってそういうこと、臆面なく言うよね。逆にこっちが照れてきたんだけど」
「そういえば、迅にきちんとお礼を言ったことなかったなって思ってな」
「律儀だな。でも正直なところ、これから先ボーダーにいる方がもっともっと大変なことあるよ。嵐山もその波に加わったわけで、でも最近ちょっと忙しすぎるよね?」
「そう…か?俺は、俺に出来ることを精一杯やってるだけつもりなんだが」
迅の言葉に、いまいち実感が沸かないらしく少しの不思議を感じる顔になられた。
嵐山は、大変だとか苦労だとかをざっくばらんには受け取らず、どこまでも真摯に向かう。気持ちも実力も伴う、それが出来る人間だったから。
「でも。この前の広報イベントで、嵐山は良い意味でも悪い意味でも目立っちゃったから。周囲から声をかけられる機会増えて、大変だろ」
あれは予想以上の効果だった。新生のボーダー。端から見れば、今までは有象無象の怪しい団体にも思えただろう。
今から思えば、一期生はそれほど数が多いというわけではなかった。旧ボーダーというくくりになる迅に、新たなお披露目としての場での登場は必要とされていなくて、一期生の中からあの場に登場する者としてふさわしい人員が選ばれた。それが嵐山と柿崎だった。嵐山の発言は齢15にしては少し優秀すぎることもあった。そして横にいる柿崎の沈黙という回答。あれが中学生らしい。その対比がうまくいって、走り出しはとてもうまくいった。さすがの迅でも、あれはとても出来ない。迅の頭のなかではすべてが未来視を前提という前置きがあるため、彼のように心が奥底からにじみ出るように15歳らしくというのは不可能だったから。
その起動で回り出した反面、あのテレビを視ていた面々に嵐山准という存在は強く残り。ああ…あのボーダーのと、無用な好奇心の塊から扱われるのに色々と時間を取られているを迅は知っていた。
「さっきもだが。声をかけてもらって…話を長く聞きすぎて、直ぐに断れないのは俺の悪い癖かもな。だけど、別段大変だとは思ったりはしてないさ」
「そう思っている方が、確かに精神的に楽かもしれないけど。今日だって、真っ直ぐ家に帰らないでここに寄ったからルート外れて何事もなかったけど、いつも通りだったら本部でもう少し足止めくらって帰るの遅くなる筈だったんだ」
「そうだったのか。じゃあ、今こうやってゆっくりいられるのは迅のおかげってことだな」
「まあ、それは…おれのついででもあるんだけど」
そろそろいいかと、決心して。迅は、ベッドサイドに腰掛けている嵐山に少し詰め寄る。今まで自室に他人なんてろく招いたことがないせいと、物を置いていないせいで、他に座る場所がなかったからそこにってことになったわけだが。
そうして少しの気合いを入れるために、迅は隊服の上着を一枚脱いで机の上に流した。
「迅、どうしたんだ。暑いのか?」
「おれ、さ。さっき嵐山にお礼するって言っただろ?この家を守ってくれた…」
「別に、迅の家だとわかっていたからやったわけじゃないぞ」
「それは、わかってる。でも、おれがしたいの。だから、嵐山もジャケット脱いでくれる?」
帰宅途中の嵐山は中学のブレザー姿なわけで、キッチリしすぎていた。
なにがなんだかよくわかっていない様子だったが、迅の要望ということで嵐山も羽織っていたジャケットをバサリと脱いで、でも近くにハンガーがないので軽く折り畳んで横の机の上に置いた。
「いろいろ考えたんだけどさ。嵐山って、どんなお礼しても喜んでくれるから、イマイチこれ!っていうのがなかなか思いつかなくて」
「もし迅が俺の為に何かしてくれるっていうなら、何でも嬉しいよ」
素直な表情。そうこれこれ。未来で何度も見た。善意に溢れた見返りなんて求めはしない感情を。
今回の件は嵐山にとっては無意識だろうが、他のことだって別に見返りなんて求めていない。そんなことをしなくとも、嵐山の元には自然とありとあらゆるものが集まる。それこそ迅がわざわざ何かするようなことは、本当はないと知っている。だからこそ、彼の善意と自分の都合の良い気持ちを少し。迅にしか出来ないこと、それは。
「疲れている嵐山に。一人でゆっくり出来る時間と、あと………」
「だから、この部屋に呼んでくれたのか。ありがとう。確かに最近寝不足気味だったかもしれないな。でも、そんなに顔に出てたか?」
「そうじゃなくて…あーもうっ!」
全く埒があかなそうだと判断した迅は突然立ち上がって、ベッドの上にひょいっと飛び乗った。体重と衝撃で安いスプリングが跳ねて、その反動でベッドサイドに腰掛けていた嵐山の重心が僅かに揺れ動いた。そうして、バランスが崩れた嵐山の腕を引っ張り上げて、同じくベッドの上に座らせた。
「じん…?いや、さすがに疲れているからって、ここで寝たりはしないぞ?」
判断しかねる状況のまま、嵐山は先ほどの流れの続きの言葉を出した。まだ一応空赤き夕方だし、さすが場所を弁えているようだ。
だが、ベッドの上で二人きりということで、目の前で少しもじもじしている迅の気持ちなんてみじんも伝わる筈もなく。
「…違うから。疲れてる嵐山へ、お礼するって言ったんだし。だから」
意を決して、軽くあぐらをかいている嵐山にずずいっと迫る。
それでもまるで動揺した様子を見せないのはフクザツな気持ちだけど、とりあえずこれ幸いと利き手を伸ばした迅は嵐山のベルトのバックルへと指をかけた。ありふれた学生服に付属している留め具は、カチャリと金属音を示す。
「迅っ、何をして!」
さすがにベルトを外そうと画策されれば、嵐山も黙っているわけがなく、反射的に制止のためにこちらの左手は留められた。
だが、迅とてベルトの開けはずしなど日常茶飯事なわけで、残った右指をくいっとひっかけて手早く外した。さすがに自分以外の人間のベルトを外すなんて初めてだったが、嵐山がわけがわからないまま戸惑っていてくれたおかげで、ガチャガチャと少しの乱雑な音を立ててわりと難なく進んだ。
「嵐山。最近忙しくて、こういうのご無沙汰でしょ?だから手伝おうと思って」
「いや、確かにそう…だけど。って、何で知って………っうわ!どこに手を入れてるんだ!?」
嵐山はこういう事、きっと一番後回しにするからちゃんとしておかないとと、悪戯を前面に押し出して。
少し及び腰になっている嵐山を颯爽と逃がす前に、くつろげたチェックのスラックスの間から迅は右手をその内側へと滑り込ませた。素肌に触れているわけではないが、布越しのもあっとした体温。腹の下を撫でられた思わず反動で猫背になった嵐山の斜めボーダー柄のネクタイが二人の間を遮るので、開いていた片方の手で迅はネクタイをぽいっと放った。
嵐山が慌てるのも確かに無理がないことだった。二人は仲がよいとはいっても、嵐山がボーダーに入ってからという数ヶ月程度の友人関係だ。それも中学は別だしボーダーでだって、本部と支部所属ではそこまで深い付き合いということ今までしたことはなかったと思う。それなのにこんなことをするには、突然すぎると思われるのは迅とてわかる。が、それは嵐山の事情だ。未来の視える迅にとっては自分たちの関係の先、それを知っているから、ぐずくずなんてしていられない。
「っ、迅。そんなこと、しなくていいから」
「おれに触られるの、気持ち悪い?」
「そうじゃなくてだなあ」
こちらを引きはがそうと肩を軽く突っぱねられたので留め抵抗するように、迅は狭い嵐山のスラックスの中を開けるように、じりじりとそのチャックを開いていった。布の隙間が開いて右手の自由がある程度確約されると、さっきまで下着越しに触れていた嵐山の性器の形が視界にも割り入ることになる。
左曲がりとか右曲がりだとか、まあそういう直接的な下世話な事を言うのが好きな相手でもないだろう。というか、確実に嵐山はこういう男同士のお遊びの延長の一つを誰かとやったことなんてない、きっと。まあ、迅も耳にする程度だったとはいえ。別に彼が潔癖というわれではないが、自然と嵐山という人間の周りに集まる友人もとても悪い子ではなかったと想う。迅のような人間のテリトリーに入ってきたのが悪いと、勝手に押し切って、決め付けて。だから、ここで躊躇していている場合ではないのだ。
ぐいっと、目の前の下着のゴムを引っ張って一気にずり下げる。待ち望んでいた嵐山の性器が外へと露わになって、その姿にひゅっと迅は少し息をのんだ。
「立派なモン持ってるんだから、そんなに恥ずかしがることなくない?」
「何言って…るん、だ。って、わっ!、突然、握るなよ!」
「いや、声かけてからだって殆ど一緒だと思うけど」
それは嵐山が制止をかけても進めるつもりだったから、意味はない。
手の平で包みこむようにその根本からぎゅっと性器を握ると、ビクリと嵐山の肩が震えたのが目に見えた。
同い年で身長も一緒だしコレだってそう大差ないかもって思ってはいたけど、己が自慰するときの比べるとだいぶ違うように思えるのは、嵐山の根本が体育系なせいだろうか。それは想像より暖かくてしっかりしてて、五本の指を絡めるように爪先に力を入れると、脈々と存在感が増してくる。
「おい…っ 冗談は、それくらいに…だなあ」
「ただのジョーダンで、他人のちんこ触る趣味はおれにはないけど? っ、あ。硬くなってきた…」
「、言うなよ…俺がヘンタイみたいだろ」
「別に。健全な中学生男子なら、誰でもこうなるでしょ」
自分の手の中で他人の性器が育っていく姿、なかなかに興味深いと何かの観察授業の一環のように迅は感心した。油断すると膨らみに押されて指先がぐらつきそうになるので、わざと緩めてまたぎゅっと握ってその感触を味わうかのようにふにふにとすると、最初は柔らかかった皮の中の芯の硬度がむくむくと増すのがわかる。
その見事な様子に、思わずおおっと小さく歓声を出したくらいだったが、さすがに当人の嵐山はそれを甘んじて受け入れるわけもなく。
「…いい加減に、しろ。迅」
「っえ?……」
あまりにもそちらをにぎにぎするのに気取られすぎて、嵐山の空いた手の動きに迅は直ぐには対応出来なかった。軽く突っぱねられていたこちらの肩へと、スナップが利いた押しが入る。
ぐいっと手が伸びる。さすがに嵐山の大切なソレを握り潰してセーブするわけにもいかないので、手放しそのまま後ろへと流されるままにぐらついた。クッションも置いてないシーツにそのまま後頭部を落とすには視界が揺らぐには十分で、アヒル座りに近い態勢で背を預けることになる。うげっと、腹から軽く声が出る。変なバランス。まあ、迅が嵐山にしようとしたことを考えると、この反応は仕方ない。そう思いながらも起きあがる為に軽く横抱きになったところで、またバランスが崩れる。それは−
「っと。嵐山っ、何…してんの!?」
「他人のに無断で触っておいて、いざ自分がやられるのは嫌だとは言わないよな?」
「えーと、、、それは…。っ…、て!ちょ、と もっと、やさしく…!ぁ」
ようやく肩肘を付きながらも上半身を軽く上げると、ずるずると引き寄せられた腰は嵐山の前に曝け出されていて、それこそさっき自分がした時のようにベルトも下着も見事にずり下げられていた。
頼り無くなったのと思い外の空気の寒さを感じたのは一瞬で、直ぐに嵐山の暖かい手に迅の性器が包まれて、喉の奥から生暖かい息が精製される。最初、倒れてこちらが抵抗出来ないことをいいことにか、大きい両の手で覆われた迅の性器は瞬く間に反応を見せた。案外容赦ないというか、ちょっと性急過ぎる。一応、迅はもしかしたらとどこかで後戻りできるようにと予防線を張ってやっていたつもりだったというのに。これは…
「う゛…ひぁっ ちょ!嵐山。自分でする時、いつも…こん、なに激しい、の?おれ、それ無理っ」
「他人に触られると、こうなる…ものなんだろ?」
「いや、ま。そう…だけど、さ…」
自分から始めた割に、もはや嵐山以上に赤面をしているような気がしてきて頬が熱い。夜泣きする身体を慰めるようにする自分のとはあまりにも感覚が違って。それに手持ち無沙汰、半端なくなって、ちょっと悔しい。こんな筈じゃなかったのに…
そうだ。これじゃあ、全然だめだ。こんなの迅が望んだものとは違って。だから、息の絶え間に嵐山の腕の横から周り混むようにそれにと再度手を伸ばすのだ。
「っ、迅!また…」
「だって、嵐山しまってないし。まだ、全然足りないだろ?」
迅へ悪戯返しすることに躍起になっていたことを逆手に取り、むき出しになったままの嵐山の性器へと再び迅は手をかけた。
良かった。そこまで萎えているわけじゃない。さっきのお返しだと、操作レバーを引き寄せるようにぐいっと掴むと、互いにそんなことをしているせいか自然と態勢が定まり。ベッドの上で対面となり座った二人は足を挟んで向き合い、それこそおでこが近づきそうなくらいの距離となった。
そうして目線をチラリと彼へと。ああこんな時でも嵐山は、真面目でカッコいいなあと思ってしまったのがちょっと悔しかったり。だからと言い訳をして、これは両成敗だと決めつけて。シーツを掴んでいたもう片方の手で、嵐山の両手を上からしっかりと掴んだ。
「…そろそろ、観念したか?」
「ま、さか。…むしろ、せっかく…なんだから、一緒に、触ろうか?」
「なにする、つもり…だ?っ、あ゛っ!」
さすがにこれは効いただろうと思うくらいに強く―――
親指と人差し指の中腹にぐっと力を込めて浮かせて、迅は嵐山の性器の敏感なくびれを狙って押し込んだ。それこそ食い込むように。痛みに反応して、先端の色と血管の浮きが切り替わる。
ぐらっと嵐山がこちらの性器を握る手が外れるタイミング、最初から視ていて。そのまま互いの腰を一番に近づけて、迅はまるで持ち寄るように二人の性器を接触させてまとめて持った。ぐちゃりとした圧迫が成される。
ああ何だろう…この不思議な感覚。合わさった性器は、さっき以上に熱くて硬くて。そこだけ違う生物のような、生き動いているかのような。一度、痛みに揺れ動いた嵐山の性器も、軽く扱って動かせば迅以上にまた昂ぶりを見せてくれて。
「わっ す、ご…」
「おいっ、迅…」
「だっ…て、こうしたほ、が、キモチいーし。あ、また…元気にな、った?」
「っ、おまえのだって…大概じゃないか」
この状況に、さすがにムキになられて、よほどビクついている迅の性器を指し示された。
もたつきながらも、二つの性器を絡めとろうと指を一緒に。指の腹で中ほどをこしこしと擦っていると、持っていたそこに嵐山の両の手も加わった。指ごと大きく包まれると、纏う温かさに思わず息を吐く。自分のも他人にも左右される無秩序な動きに乱雑に刺激されるのだ。
「あ、んっ… や、嵐山っ そこ、先は。まだ、ゆび引っ掛けない、で」
「迅…そっち全然、手が動いてないぞ?」
「だって、ぇ はや、い。もっと、ゆっくりシて」
深く重ね合わさせてられた上から迅の指ごと押されて、へこまされる。竿をまとめて上下に動かされれば、その摩擦衝撃も二倍あるような錯覚も。ぐらつく指の輪が開いても、裏筋も全部その上からまたきつくされて。自分の手の筈なのに、嵐山の手の動きにつられて促されて、ペース配分がとてもうまくいかない。吐き出す息も胸の奥に固まったような熱いものが何度も絶えなくやってきて、呼吸がとてもじゃないけど許容を超える。
「俺だって、余裕がある…わけじゃないって、わか、るだろ?」
「…あら、しやま。おっきく、なりすぎっ 持ち、きれないから、もぅすこ、し治まって」
「無茶言うな… 迅だって、もう戻れないじゃないか」
「ヤ…んっ、ぁ。わ、か…った もうはな、すから。手ぇ、ゆるめ、て」
指先からも伝わる膨張からの圧迫に、ぶるぶると震える。もう、とても耐えられる様子がない。二人の手の中に押し潰されて、パンパンにその性器が絡み合っているのだ。
ふっと、こちらの主張が通り。迅に重ね合わさっていた嵐山の手がふわっと浮いて外れた。はぁ、ようやくと息をつけるかと思っていたのに。溜まった熱が、少しの分散を得て。
「今やめても…。どうせ、また触るんだろ?」
「…えっ、いや。それは…ね。っ!あっ、そこ。ンッ……だめ…ダメだって!先っ…ぽはホント、ダメ!」
手を外してくれと訴えたのに、再び詰め寄った嵐山の右手は今度は迅には重ならず、二人の性器の先端をずり合わせるかのように合致させた。過敏な先端同士が極度にぶつかり合い、互いの刺激を相乗効果で促す。左手で、軽く竿を支えられそのまま上からぐりぐりと先端だけつままれるように右手の平の中心で覆われながらもぐりぐりと弄られる。割れ目を重点的に扱われて、かち合うようにごりゅごりゅといじめられるのだ。性器の突起をわしづかみにされて、歯が浮足立つように口の端から唾液がこぼれそうになる。
目に見えるべたべたな先走りがじわじわと内側を濡らす。交わった漏れ出でる精液、もはやどちらのものだかわからない。こんなときにでも嵐山には規則正しくなぞられて、上下に丁寧で、逆に辛い。
「は、…ン、あっ、あ!ほんと…もぅ、ムリ!イき、たい!んっ、ん!はな、して…」
「っじんっ! こら、っ あばれる、な…、え…あっ…!」
がむしゃらに空いた手を動かした迅だったが、ふいに掴んだのが嵐山の手首だったのが、またまずかった。
断続的に先端を刺激してた嵐山の指先が、一層と深くぐいっと一番過敏な尿道の先に綺麗にそろえられた人差し指の爪がカリッと引っかかった。そして、めり込んだ。
どくんっと、一気に血栓が崩壊したかのように、込み上げるのはもちろん許容を恒得た射精感。
「ふぁっ!あ、ア…あン!!!ア、あーーっっ、!!!!!」
ぎゅっと目をつぶって、その衝動に迅は流されるままとなった。
酔いそうなくらい暴れる背筋を駆け巡って、ソレは脳まで刺激する。鈴口からびゅるびゅると、どっぷり溢れ出る精液が嵐山の手を汚し続けた。
他人に射精管理させられることがこんなにも、たまらないだなんて。
「っ…は、……はぁ」
「迅、大丈夫か?」
前かがみになり、がくりと項垂れた迅を気遣う声が上から落ちてくるので、ぜーはーと息を整えてから答えることとなる。
「ん…へいき。は… あれ、嵐山、は?」
「え、俺か?」
「イってないの?」
きょとんと若干膜の張った虚ろな目でふいにその下半身を見やると、ドロドロと出したまま一応事を萎えたのは自分だけだと迅は気が付く。嵐山のは、変わらずピキピキのまま。
「あ、まあ。そういうことになる…な」
「なにそれ。恥ずかしい思いしたの、おれだけってことじゃん」
「えーと、そもそもだな。まずその前提がおかしいだろ」
「なんで?じゃあいい。口でするから」
「は?ダメに決まってる。悪いが、ちょっとトイレを借りるぞ」
へばりついていた迅をべりっと引き剥がして嵐山は何とか己の処理をしようと、腰を持ち上げた。気まずい雰囲気から脱却しようとしたのは評価するけど、今放すわけがない。それに。
「あ、無理。ここ警戒区域内だから普通の家は水道も電気も止まってるんだ。トイレも照明も使えない」
「そう…なのか?」
「うん。今は夕方だからこの明るさだけど、夜になれば真っ暗。だから、さ。さっきより断然気持ちいい方法で…抜いてみない?」
一度離れた身から、またじりじりとにじり寄って、イイコトしようと明るく促してみる。
その最中に、半分脱げかけていたズボンをずるずると後ろへ追いやって、ベッドの下にバサリと放った。換気の為に若干窓は開いているとはいえ、誰もいないため、静か過ぎるそんな音が響くのだ。
「っ、何で。迅が服を脱ぐんだ!?」
「だから。嵐山もおれも、きちんと一緒に気持ちよくなれるように用意してるんじゃん」
「嫌な予感しかしないんだが…えっ、あ…おいっ!」
「男同士で気持ちよくなる時、ここ使うんだよ。知ってた?」
再び戸惑う嵐山を尻目に、膝を折り曲げて目の前に少し尻だけ突き出してぐいっと尻たぶを開いて、晒した。
今のところ嵐山の答えなんて気にしている場合ではない。その場所を見せ付けるように不恰好な格好である自覚はあるものの、なんとか手を回して示すのだ。ちょっと滑稽にも見える体勢だろうけど、これからすることの方がもっとあられもないわけで。
「どう見ても、無理だろ…」
「案外、大丈夫だって。触ってみる?」
「おい…また、手を引っ張るなって、あ!うわっ…!えっ………?」
自分の性器と迅のその場所を見比べてて、率直に漏れ出る率直な感想はありがたかったが、出来ないではなくやるともう迅の心の中では決まっているから。
がしりと嵐山の右手を掴んだ迅は、導くように指を一本突き出す形に促して、迅の割り開いた後ろの窪みに宛がわせた。本来ならばそこは硬く閉ざされているべきはずではあったが、引っ張られたせいで僅かに膠着した嵐山の人差し指の爪の先がぐいっとそのまま軽く入った。それこそ、弾みのように。
「ね?大丈夫そう…でしょ」
「こんなに…あっさり入るものなのか?」
「いや、さすがにね。さっき嵐山が来るのただ待ってたわけじゃなくて…きちんと準備してたというか」
まごつきながらも、もごもごとソレを告白する。
だから、わざわざこの家の前で待ち合わせをしていたということもあって。そうだからこそ、ずっと我慢が出来なかったんだということもある。
それでもいざ嵐山の性器を直に目にした瞬間は、えーとホントに入るのか?と不安にもなったけれども、またそれは別の話でいい。
「あ…ぁっ…嵐山、…もっと奥まで、いれ…て」
「意外と柔らかいもの、なんだな…」
「ふ、…ァ…!」
その事実を確認するように嵐山は、どこか戸惑いながらではあったが含みを持って少し頷いたようだった。こっちにはもうそんな余裕ないから、あくまでも先を促す。
昼間一度、迅が指で慣らしたナカは別の男の指も同じように自然と飲み込んでいく。だから少しの力を加えればそれこそ滑るようにはくはくと、どんどん受け入れて。だって、本当は自分の指ではなくて、これを待ち望んでいたから。
嵐山が与えてくれるものがぎこちない不規律な動きだからこそ、自分で慣らしたときとは比べ物にならないほどの、ふいの揺らめきを得る。ぐちゃりと既にとろけかけているナカに余裕があるせいか、内側の壁を伝ってかき混ぜられているかのような錯覚を得る。中に残っていたローションの、くちくちとした水音がベッドの上を巡る。
「迅…気持ちいいのか?」
「ったりまえ…じゃん。………って、あぁ!これじゃ、またおれだけ…」
このままじゃダメだとようやく気が付いた迅は、身をゆだねるのを止める必要があったのに、頭がぼうっとしてしまった。いけない、いけない。
何とか気を張って、利き手に力を込めて伸ばす。そうして、そのまま嵐山の手首を掴んで、指を押し出すようにずるりと抜かせた。それでも自分で抜いたくせに、少しの名残惜しさに嘆声が漏れ出る。最後にはちゅぷりと緩い水音を立てて跳ねる程に。
でも、これでようやく準備は整った。あとは…一つ。
「嵐山…これ、ここに入れて?そうすれば、二人で気持ちよくなれるから」
もはや遠慮なく軽く掴んだ嵐山の性器を、迅は自分の随分とゆるくなった後ろへと指し示した。
さすがに、指のように簡単に挿れられるものではないから、どうしたって嵐山に動いてもらわなければいけないし。
「いや…ダメだろ、それは」
「平気だって。元から大分ほぐしてたし、もう入るよ…」
「そうじゃなくて、そんなことをしたら…迅とセックスすることになるだろ?それは出来ない」
「っ、少しだけならセーフだって。それに、せっかく準備したのに…」
「だからって、な。そういうものじゃないだろ」
「嵐山。おれに射精させといて、自分だけはダメだっていうの…ずるくない?」
弱みというわけではなかったが、無理に付け入る。そもそも本来ならそういう手順のつもりではなかったという頭もあった。
このままでは平行線――― 迅は一歩も引くつもりはないと豪語して、嵐山の性器をガッチリ掴んで放さない。
「………。わかった、でも。本当に少しだけ…だぞ?」
「うん…来て、」
迅は僅かに息を整えてから、その後ろ軽くクッションをおいて寝転んだ。
いよいよ嵐山の片手が、こちらの尻たぶにかかり、緩くその場所が開かれる。迅の小ぶりな尻が彼の手の中でフィットしたと思った次には親指を使われて窪みの端が、ぐいっと左右に引っ張られる。促されて、入り口が突っ張るのが、とてもつなくぞわぞわとした。迅の角度からは見えないけど、きっと嵐山を求めて止まないソコは赤くひくついているだろう。もう随分と勃起したままの状況で落ち着いた、嵐山の起立したソレを。
迅が息を緩く吐いたタイミングで、その性器がぐちゅりと宛がわれた。それでも、直ぐにナカへ入ろうとはせずにまずはゆるゆると角度を確認されるかのようにされて、それがじれったく感じる程度にはもう迅にも余裕がなくなっているとわかった。最初はまだまだその大きさを許容できないはずなのに、ぴたっと密着されるとまるで許可を得たかのように。そして、一気に押し通る。
「ぁ…んんっ!…ン!!!」
「っ!迅、やっぱりキツ…」
「……ヘーキ…ん。ヘーキだから、」
「あまり、動くな…」
「ぁ はいって、く…あら、しやまの熱っいの、が。…は、ンっ」
「悪いっ、も…少し力を、抜いて…」
「お、れのせい、だけじゃ、ない…でしょ。あらしやまだって、おっきすぎ…だし」
「好きで、こうなった、わけ。じゃ…」
「はぁ、は… いまっ、どこまで入った?」
お腹の奥から熱すぎる息を吐き出して、何とか整えてから尋ねる。
下半身から連動する直接的な感覚全てに、まだ身をゆだねられはしないけど、想像以上に余裕がなくなってしまい、下を見やるほど身をあげられない。でも、何かとてつもないものが、うごうごと繋がっているのだけはかろうじて。
「…少しだけって、言ったから、な。先だけだ」
「ん…そのまま、じゃ。あんま気持ちよくない、でしょ?動いていーよ」
こんな時にも真面目に、嵐山はぬるりと二人が繋がっている場所を半周するように指で撫でて教えてくれた。おかげで、なんとか一番厄介な場所は入ったとわかった。でも、本当に律儀で…そこで留めていてくれるのはいいけど、やっぱりさ。
「いや、もう十分だ。それに、これ以上は…」
「うそ…だ。だって、さっきより嵐山の大きくなってる、し、それに。先からちょっとナカに出て、るよ。熱い、の。いっぱい我慢、してる、でしょ?」
「それは…迅のナカが、狭すぎる…から」
「だいじょーぶだって。これくらいなら、セックスしたうちに、入るわけないし ほらっ、こうやって」
嵐山の節度の枷を少しずつ外させて、こうやってなだれ込んだのだから、あともう本当に少しなのだ。だから、触れて促す。
腹を据えた迅は、安定が叶ったことを見越して、そのままの状態でぐらぐらと尻を揺らがせた。そうすれば、嵐山もわかりやすくビクついて、繋がっている腰が丸ごと動く。挿れて以降、かっちりとその場で抑えながら微動だにしなかったからこそ、過剰な迅の動作はなかなかに厄介に思われたけど。
ひっかけて遊ぶように、先っぽだけ固定させて、わざと変に動かす。そのバランスの悪さがちぐはぐで、ぐっと後ろに力を入れて、嵐山の性器を強く締め付けると、余計にぐらぐらと上下に揺さぶられる。
「迅!勝手に…」
「あらしやま…も、腰動いてんじゃん… こっちのほうが、キモチい…いだろ?」
「も、抜くぞ」
「っあ。待ってぇ はンっ!…ァっ」
ずしりと腰が引かれて、接触していた内壁が引きずられるように持っていかれて、ちゅぽんっと喪失感があったけど、もちろんそんなのは嫌だった。
既にとろけていたナカのせいか、嵐山の先走りのせいか、おかげで外に出されても追いかけるようにまた、触れさせる。一瞬でも外気に触れたはずなのに、嵐山の性器はまだまだ熱いままで。その勾配接触をちゅっちゅとバードキスのように何度か繰り返す。
それでも体勢的に上となる嵐山の方が圧倒的に有利であることに違いはなく、さすがにそんなことの融通は少しで、本格的に留められた。悔しい…まだまだなのに。もっと…もっとだ。少しの受け入れた太いモノが無くなった余韻の寂しさで奥が泣いている。ひくひくとした収縮を待ち望んでいるから。
「もう。終わりでいい、だろ?」
「だーめ。あらしやま、まだ出してない…し」
「えっ?……うわっ、!」
肘を付きながら起き上がった迅は、最終手段に打って出ることにした。
とりあえずマウントを取ろうと、ただ単に嵐山に覆い被さるだけのつもりだったが、弄られた下半身の力が言う事をきかず、少しタックルしたかのように彼の胸にこちらの肘が当たりゴンッと。完全に意表をつかれた嵐山は、そのまま後ろへバタリと倒れた。それでもベッドのスプリングに衝撃は大分吸収されたとはいえ、視界が他人によって反転させられれば、直ぐに頭が働かないのも事実だった。
この隙に、えいっと少しの掛け声をかけるくらいに腕を伸ばし、迅は嵐山の腰の上にひょいっと飛び乗った。二人の身長は変わらないわけで、体重だって筋肉の付き具合的にまあ嵐山の方が上とはいえ、平均的な男子中学生として迅はあるわけで、さすがに少しぐえっと内臓を刺激されたような嵐山の声が出て、申し訳ないとは思ったけども。
「っ…重いっ!」
「ごめんって。だから、少し…じっとしてて」
「おい!、迅。それはダメだって、言っただろ!?」
「もう…したくなったんだから、仕方ない…じゃん!」
こちらの横暴を咎められるが、若干無視して押し切る。
未だぐらつく嵐山の腰の間に跨った迅は、いきり立ったその性器を先ほどと同じように自分の後ろへとなびかせる。さっきぶりな触れ合いに、そこはまたピッタリと嵌るのだから。
その加減を見る為にちゅぽちゅぽと何度か圧したり引いたりと、位置と角度の按排を確かめる。大丈夫そうだ。きちっと尻の間で固定されたのを見極めて、性急に腰を落としていく。
「開き直るな!ぅあ、入る!」
「あ、らしやまが…ガマンすれば、まだ大丈夫だよ。っ、これ…はセックスじゃない… ちょっと、だけ、挿れてみただけで、通る」
「う…、屁理屈すぎる、だろ。もう言い訳出来な、くなる。そん、な…深く入れると………本当にっ!」
「あ゛。ぁん…、あっあ…ァ あつ、い」
いよいよ体重をかけて、ずずっと埋め込んでいくと、じんわり犯されていく感覚が全身を駆け上がる。元々最初さえ入れば後はなし崩しだ。受け入れる準備など当に備わった奥が、ずっと待ちかねているのだから。
空気ごと入ろうが構わず、どんどんと腰が落下スピードを増す。嵐山の性器の、太さと、形と、熱と、重量全てを、体感できる程に。内側の器官の圧迫があるのは、下から貫かれるせいか。それでも、圧倒的な存在をナカへと受け入れて味わうのは耐えがたいほどの悦びをもたらした。
ちゅぷちゅぷと音を立てながらも、ずぼりと入っていく狭いナカを確実にうごめいているモノ、それが嵐山の性器であること、それが何よりも迅を感じさせる要因であった。
「ぜ、んぶ…はいっ、たよね?」
「ぅ…迅!いま直ぐに抜く、んだ」
「やーだ、よ。ぁ、ん!ふ、ソコ…イいっ…ね」
「こらっ!この、状況で…無駄にうごく、な」
「だっ、て。おれは…あらしやま、をイかせ…ない、と。いけない、しっ… んっ、んっン」
「そんなコト。一度も、頼んで…なっ、い。ア!っッ」
腰に手をついて嵐山の重心を握りつつも、迅はその腰の上で途中まで性器をずるりと抜いてはまた、ぱちゅんと尻を低めて密着させる。そのままずぶずぶに飲み込み咥え込んだ状態で、じゅくじゅくと腰を回すのさえ、繰り返す。嵐山の為とは言いつつも、自分もいいトコが当たるように彼の性器をひっかけて当てて押すので、もう堪らない。浅い側面の普段は指でいじると反応が危ういところとか、好きすぎる。一番奥だって、これほど容量で突かれれば、満遍なく快楽を与えてくれる。反動で内壁がめれて引きつろうが、その僅かな痛みさえ快楽へと切り替わるのだ。だから今更彼の制止の声などもう聞くはずがなく、腰しか使えなくなってしまった本能のままに、むさぼり動きまくった。
耐え難い応酬に、元々ずっと出すのを耐えていた嵐山の性器の怒張の孕みが、ナカで限界を訴えているのがわかる。
「っ!ダ、メだ!…もう出、るっ―――」
「ぅん…っは!…、いーよっ、だし…て。、そのまま、ソコに…」
「…いやっ。やっ…ぱり、ナカっは…良く、ない! っ、ア!!!」
ぎゅむぎゅむと後ろをこれ以上にないほどにキツく引き絞って、射精を催促すると一回、ずんっと腹の奥が重くなった。それは嵐山の腰が、迅につられて勝手に動いてくれた証拠で。
一瞬、びゅるっと熱すぎるモノが迅の体内に巡ったと思った。そのまま身をゆだねようと思ったのに。驚愕の瞳をこちらに向けた嵐山は、そのまま迅の力が抜けた腰を両手でわしづかみにして、強引に性器を引き抜いた。最高の硬度を持ったその性器が、乱雑に外へとずるりと飛び出る。幾重にも漏れ出る精液を伴ってそれは滑るように、迅の尻の間にびゅくびゅくと撒き飛び散りながらも、かろうじてギリギリのセーフセックスが成された。
「っ、う…そ!?あ、ヤ…だ。欲しいっ、のに!」
飛び出るよがり声。迅とて、この状況を看過出来るものではなかった。
とっさに、だんっと上から強く手を突いて腰を押した。一度挿っていたものが再び舞い戻ることの方が余程簡単だと、知っていたから。腰を完全に引こうとする嵐山に追随するようにこちらの鈍い腰を動かして、まだと待ちかねている迅のナカへと強引に挿入させた。
それは同姓だからわかるコト。男の射精は、そう簡単には止められない。それを利用して。ずっと我慢させていたからこその、長くて濃い嵐山の精液をも全てを余すことなく受け入れるように。
嵐山を射精させたままに入れるソレのすべりは驚くほど簡単に、迅の奥を勢い良く貫いてゼロ距離で陥落させた。今までで一番激しい快楽を引き出す。だからイきたい…というこれ以上はない感覚が迅に駆け巡った。
「ふぁっ、あ!ん!!! ツ、ひぃ、!ぅン!ア!…アッ、あ…アアァぁ!!!アーー!」
さすがに後ろだけでイけるほどではなかったので、反応しまくっている自身の性器につたなく指先をばらばらに絡める。
後ろの反動と連動するように動かせば、呆気なくそのまま迅もその場で果てた。





◇ ◇ ◇





「嵐山。もしかして後悔してる?おれと、セックスしちゃったこと」
全てを終えて、べたべたになった身の回りをタオルやらティッシュやらで拭き、ようやく衣服を元通りに着込んだ迅は少し恐る恐る尋ねた。向かいの嵐山は軽く腕組みをしていて、二人は違う意味でベッドの上で対峙することになったから。
「俺は何度も。ダメだって言ったはずだぞ」
「…そうだったね。ゴメン」
「こういうことは、好きな人とするものだろ?それを…勝手に」
「おれ、嵐山のコト好きだから。いっかなって思って」
「そう…だったのか?」
「そういえば、言い忘れてたかも………」
ちょっと必死すぎて、そちらに気が廻らなかったというか。事を運ぶのに色々と錯綜していて、肝心な事に対する配慮が欠けていた。正直、言うタイミングを見出せなかったという未来の読み方をしてしまった。それに、そんなことを伝えたら避けるように嵐山は頑なになるような気もするし。しかし結果オーライって奴なのか?うん。
そして…告白をしたというのに、少しの複雑な顔をこちらに向けられた。
「そんな重要なことを、今言うのか?遅い。まあ、俺も多少は迅のことを責められはしないが」
「えと、それは?」
「俺だって何とも思ってない相手に手を出すほど、野暮じゃないさ。迅の事、きちんと好きだぞ。
しかしそうだったとしてもな。こういうのは順序があるだろ?それこそ、最初は手を繋いだり。次はキスしたりだな…」
「わかったよ。じゃあ…」
確かにそれは嵐山の言うとおりだった。告白も何もかもすっ飛ばして、極論に飛んで、とんとん拍子にコトを進めてしまった。その自覚はある。だから。
再び少し近寄った迅は、今度は嵐山の顔にもう何度目か迫る―――
そうして、ふいにその唇に軽い口付けを。次に、開いた右手をぎゅっとこちらの手で握り返した。それこそ免罪符となるように深く。

「これで、キスもしたし、手も握ったし。いい、よね?」
「…順番が逆じゃないか?全く…」



それでも最後には嵐山少し笑いながら、今度は俺からキスしてもいいよな?と言ってくれた。
それは、ようやく本当の意味で二人の思いが通じ合った証だったから………迅も、もちろんと笑い返して自らの瞳をそっと閉じた。





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