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未来から来たエリ迅の迅さんが、ワートリの迅さんの息子という設定の酷いパラレル。迅さん女体化。 嵐迅が前提ですが…エリ迅の迅さん×ワートリの迅さん♀という、昼ドラ展開話です。特に、エリ迅の迅さんのキャラ崩壊が激しい。
※ どんなに胸クソ話でも大丈夫…という方のみ、ご覧下さい。











自身の未来視の限定的な範囲を、迅はとっくに理解していたつもりだった。
だからこうやって避けて避けて避けまくっていた嵐山と予想外に遭遇することは、有り得たはずなのに。
「迅、久しぶり」
「っ…ど、うしたの?………わざわざうちの支部まで来て。まだ嵐山、たくさん忙しいだろ?」
「いや、あれからバタバタしててきちんと迅にお礼を言ってなかったと思って。これ、お返し」
「別に気にしなくていいのに。あ、ありがとう」
その迅が一番憂鬱だった出来事に対するお礼で。わりと大きな包み紙を丁寧に手渡されて、両手が一気に塞がる。
それは嬉しいし、物には何の罪もなかったから…ただ抱きしめる。フェミニストにも近い嵐山は、女性の迅に負担をかけないようにとそれを自室に運ぶのさえ手伝ってエスコートしてくれた。廊下をただただ、歩く。
「いいよ。わざわざ」
「いや、これくらいさせてくれ」
塞がっている両手、そして行き先をスマートに導くようにと、嵐山は迅の自室の扉をよどみなく開いた。

「え?」
先行していた嵐山が、少しの動揺する声を出した。
迅は後ろにいたので見えなくて、何のことやらと同時に歩みを止める。だってそこは今朝だって寝起きした、自分の自室だ。何かそんな嵐山が驚くようなものあった記憶などない。それに、なんといっても殆ど何もない部屋で女性らしさなんて微塵もないその場所に対して、今まで躊躇されたことはない。ボーダーでの付き合いも長いので、この部屋に嵐山が立ち入ること、別に初めてというわけでもないのに。
だから、迅は立ち止まった嵐山の横からひょいっと自室の中を臨み込む形になったのだが。
「は?誰………」
室内には、まさかの先客がいた。それさえも、例えば玉狛支部の誰かとかだったら許容の範囲内だが、もちろん違って。
知らない…少なくとも今の迅が知りえてはいけない青年が、まるで自分の部屋にいるかのようにベッドに腰掛けて…それこそ迅の好物であるあの袋菓子をバリボリと頬張っていたのだ。
こちらの動揺など気にもせず、余裕顔で立ち上がった青年はしゃべる。
「初めまして〜 オレの名前は、迅遊一。そこにいる、迅の息子ね。未来から来たんだ。ま、ヨロシク!」





この異常な状況にもへらりと笑う遊一という男は、確かに迅にそっくりだった。
男女の違いがあるため、身長や体格はそれなりに差はあったが、少しの赤みを加えた茶髪と猫っ毛に近い緩い髪質は同等。顔のパーツや作りもそのままで、女性であるこちらの方が丸みを帯びていると本当にその程度だった。恐らく今の迅たちと同年代。
息子だと怪しく名乗ったのは、何よりの証拠を自身で体現していた。
「有り得ない」
「え?どうして、そう思ったの?たしか未来が視える筈だけど、オレの知ってるアンタは」
何かを悟った迅は、瞬時にそう呟いて鋭く断言した。
しかしその効果は目に見えてなく、遊一は自らの存在を過剰に否定されてもチャラつきは変わらず、茶々を入れるように頭の中の知識を口にした。
「だからこそ、有り得ない―――」
「迅。本当に、彼はおまえの息子なのか?」
二人の迅の会話はどこまでも平行線になりそうで、結果的に位置的に両者の間に挟まれることになった嵐山が戸惑いつつも尋ねてきた。
「…おれの知っている未来では確かに、息子がいる未来がないわけじゃない。だから、綿密にいえば完全には否定できないんだ。でも…」
突然のことすぎてまだ頭が混乱して、言葉途切れ途切れに迅は言う。
遊一という男が、未来から来たとかそういう謎。そんなことよりも凌駕することが、迅の胸の内にあって未だにまとまりがつかない。ネイバーなんてモノがある世界、どんな不思議がやってきてもある程度驚かない心は持った。だが、自分自身に関係するコレはダメな筈だと未来視が訴えている。
「アンタは、嵐山さんだよね。へー、てことは…」
「嵐山は関係ないだろ!」
迅の疑問に何一つとして答えはしないのに、目ざとく嵐山に着眼をされて焦り、少し叫ぶくらい鋭く声を出した。
このにやにやとする遊一という男が、本物か偽者かそんなことはどうでも良かったが。だがもし事実だとしたら、一番今言ってはいけないことを言おうとしていることに間違いはないから、遮る以外の選択肢はそれこそ選べやしなかった。
「…すまない。無遠慮に立ち入ってしまったな」
おかしいことに謝ったのは嵐山の方で、失言をしようとした遊一は全く動じていなかった。まるでこの展開を知っていたかのように。彼には、迅のような未来視なんて能力持っていない筈だ。それなのに、現状誰よりも優位に立ってこの場を仕切っている。
「違う…嵐山は何も悪くないんだ。なんかちょっと混乱して」
「突然こんな状況になったんだから、そうなる方が当然だろう。
………ところで、えーと迅遊一くん?きみは未来から来たと言ったが、どうしてわざわざ」
「そりゃもちろん。そこにいる母親に大事な話があって」
悪い空気になっても、遊一は臆せず飄々と述べて迅を見いやった。
心なしか母親という言葉を強調さえするように、だ。嵐山の目の前だからこそ、それはわざとに思えて。
「そうか。なら、部外者の俺がいると話にくいだろうな。席を外した方がいいだろうか?」
この状況を賄いきれていない迅を心配するかのように、労わりの視線を向けながらも嵐山は言った。
きっと、彼は困っている。本当は部外者というわけではないのだが、そんなことを嵐山が知りえるわけがないから仕方ないとはいえ。どこまでも配慮がなされる。
「………おれも、もう少し聞きたいことがあるから、そうして貰えると助かる。嵐山、まだまだ忙しいでしょ?おれもちょっとは落ち着いたし、このことは必ず後で連絡するから、この場は…」
「わかった。何かあったら遠慮なく電話してくれ」
間違いなく頼りになる言葉。もうその手を迅が掴むことは出来なくなってしまったけど、それでもこうやって向けられる優しさは何よりも嬉しくて、だから。
「巻き込んでごめんね。あ、そだ。結婚式のお返し。わざわざ持ってきてくれて、ありがとう… っ、彼女にもよろしく伝えておいて」
「ああ、もちろん。妻と一緒に選んだんだ。迅が喜んでくれると嬉しい。じゃあ、また」
最後は明るくいつもどおりの嵐山で、この場を後にしてくれた。

そう、迅の好きな嵐山は先日結婚式をあげたばかりの新婚で。こんな場所で迅に構っている場合ではないのだから………






「あーあ。本当は…『迅にもいつか子どもが出来るんだな!おめでとう!お揃いだな。実は俺たちにも…』って報告しに来る筈だったのに、帰しちゃっていいの?」
パタリと扉が閉まり、嵐山が部屋から離れていく足音を聞いたうまい頃合に、遊一は嵐山の口真似を茶化した形で入れた。
そんなこと…未来が視える迅が知らない筈のない情報をわざわざ大きく口にする性格。間違いない、こういうところも彼は自分の息子だと思い知らされる要因で、確信した。
「おまえは…おれが選ばなかった息子の筈なんだ。それなのに…どうして、この世界に来たんだ!?」
キッと睨みながら、遊一に詰め寄る。
かなりの啖呵を切ったが、女性であるからこその凄味が薄いのか、予めわかっていた浴びせられる言葉だったから効果の薄さか、どちらか。
少なくとも遊一は、動揺などまるでみせずにこれさえも受け入れて満足顔を見せていた。まるで迅がこう言うのを待っていたみたいだ。
「そんなの決まってるだろ?このままじゃ、オレは産まれない。だって、オレの父親は嵐山准しか有り得ないんだから」
ぱたり…と力んでいた拳から少しの力が抜けていく。そのどこかで知り得ていた事実を突きつけられて。
そう、そうだった。数多の人間と出会おうと迅の心を攫っていくのは、嵐山ただ一人で。結婚をするのも子どもを産むのもそのルートしか有り得ない。幾多の未来の中でもそれだけが…と知っている。何よりも。そのか細い未来を迅は蹴り飛ばしたのだ。それが今。
元から嵐山には迅なんかより相応しい女性がいくらでも存在していて、その中で最も彼が幸せになれる相手と結婚するように仕向けた。それが嵐山にとっての一番の幸せなのだ。だって、もし嵐山と結ばれても産まれてくる息子はこれだ。ただ迅に似て、似すぎていてその性格さえ、わかるだろ?でも、嵐山はそんなこと気にしない。気にしすぎているのは迅の方だってわかっている。選び取れなかった道。それは一つも勇気がなかったからでもあって、だから今こうやって突きつけられている輪廻。
「今更、おまえが来ても遅いんだ。もう嵐山の未来は揺ぎない。おれがどんなに曲げようとしても…」
この子には悪い事をしたと思っている。でも、嵐山の方にだって別に産まれてくる子どもがいないわけではない。だったら犠牲になるのは自分の子どもの方がよほどマシだと思って。それ故の、遊一が抱く反抗意識も理解出来る。
でもどうすればいいっていうんだ。一度、腰を入れて結婚までした嵐山の意思は固い。家族になった瞬間に全てを受け入れる。たとえ今後、どんな不慮の事故でたとえば妻、たとえば子ども諸共亡くしたとしても、そのままひたすら准じるだろう。一度傾倒した感情が、迅へと返り咲くことは絶対にない。
そんな嵐山だからこそ好きになったという気持ちもあるから余計に。割り切る為にこうやって良い異性の友達を演じているのに…その迅の不屈の精神をぐらぐらと煮え立たせるようなことをしないで欲しかった。それが自分の息子でもだ。
「そう…みたいだな。じゃあ、違う方法を取ることにするよ」
突然、ぐいっと手首を強く掴まれる。それこそ爪を立たせられるかのようなほどに強く。その衝撃と痛みに、一瞬迅は顔をしかめる。そして意識がそちらに揺らいだと同時に、呆気なく身体が引きずられる。
ドンッと腰を軽く打ったと理解した時、世界は反転して…もう既に迅はベッドの上に押し倒されていた。
視界が少し薄暗くなるのは、迅の身体に覆い被さり押さえつけているのが遊一だからで。こんな状況でも、彼は少しの笑みを絶やさずにいた。
「な、何を…?」
「もう視えているんじゃないか?これからされること…」
「っひ!………ヤだ!!!」
そんな…未来視でチラチラとやってくる光景。今後の迅の道は一つに凝り固まり、とても逃げられないソレばかりが一気に脳内を占領して。
「ああ、そっか。まだ処女だっけ。でも大丈夫だろ?だって、オレの身体の半分はアンタが大好きな嵐山准なんだし」
「そんなの、!関係、な… たすけて。誰か…!」
「どうする…嵐山准に助けを請う?未来の自分たちの息子に犯されそうだからって、訴えてさ」
そんな出来るわけがない口を吐かれるが、きっと遊一もそして迅自身さえも選べない。そんなことをしてしまったら、今度は嵐山自身へと被害が飛び火してしまう。せっかく誰よりも幸せになったのに。もう…
ジタバタと暴れる両手を頭の上で強く繋ぎとめながらも、空いた片方の手で遊一は器用に迅の衣服を剥ぎ取ろうとしている。これは冗談なんかじゃないと、現実もそして未来視をもずっと語りかけている。洗脳されてしまうほどに。
「なんで。…こん、な………」
「未来のアンタは本当に嵐山准が大好きで、大好きで。それは嵐山准が不慮の事故で亡くなっても変わらなくて… だったら最初からオレという危険な要因。排除しようとするから」



これは、迅が嵐山を愛しすぎたからこそ招いた結果。
だから壊れるのは、迅一人でいい―――そう思っていたのに、ああ…この未来の結末は。



「ねぇ。オレとアンタの間に産まれた子どもは、どうするの?」